編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
ECD『他人の始まり因果の終わり』
(河出書房新社)
- 装幀/鈴木成一
現在、闘病中であるラッパー・ECDさんの新作は、彼が自分自身、そして家族に向き合っていく過程が綴られた本。そのカバーは静かな佇まいのデザインだが、店頭では強い存在感を放っている。「この本は外に向けて何かを主張しているわけではない。自分に向き合うことで、彼はこれまで知らなかった自分自身を発見し、さらに文章に綴ることで自分自身を確認していたのではないか──。そう感じ、読み始めてすぐに本のイメージが固まりました」と装幀を手がけた鈴木成一さんは話す。
読んだときに感じた"主張性のない存在感"を表現すべく、カバーには質感のあるグレーのビオトープを使用。上部の間を引き立たせるために、タイトルと著者名はインクを使わず、白箔で入れた。偶然にもタイトルと著者名は縦に3文字ずつ字切りすることができた。この文字の置き方も、同書ならではの"間"を引き立たせている。
「僕の持論ですが、装幀=墓あるいは仏壇と思っています。作家のある時点での思いや思想を固定化させる。言い方を変えれば、いったん正しく息の根を止めることで、その物語に形(装幀)を与えるものだと思っています。その考えが一番すんなりと形になったのが、この本でした」。
LOGO
森永乳業
- AD/副田高行
森永乳業は、9月1日に創業100周年を迎えた。今年4月には「かがやく"笑顔"のために」という新しいコーポレートスローガンを掲げ、記念ロゴを制作。現在、広告をはじめ、さまざまなシーンで活用している。
100周年記念ロゴは、数字と英文字を使って"おいしいものを食べたときに思わずこぼれる笑顔"がデザインされている。「森永乳業が100周年を迎えるにあたり、お客さまへの感謝の気持ちと、家族の愛や笑顔などのイメージで制作してほしいというご依頼がありました」と、デザインを手がけた副田高行さんは話す。
デザインにあたり、副田さんは森永乳業を想起させるイメージとして、ミルククラウンやクリーム、スプーンなど、さまざまなモチーフを検討したという。その中で、最終的には「おいしいものを食べたときの笑顔」をモチーフにした案が選ばれた。「書体や顔のデザインについて目線や黒目の大きさなどを検討し、笑顔にチャーミングさが感じられるような表情を探りました」 ...