赤瀬川原平のパロディーとユーモア
これまでデザインに関して、たくさんの人やものから影響を受けてきました。その中でもデザインに対する態度で最も影響を受け、今もたびたび思い出すものがあります。それは、前衛芸術家の赤瀬川原平が1970年代に週刊誌『朝日ジャーナル』(朝日新聞社)で連載していた『櫻画報』です。
デザインの見方
大学に通っていた頃、ライティングスペースデザインという授業で、「正方形を説明せよ」という課題が出ました。正方形の定義、4つの辺がすべて等しく、4つの角がすべて等しい、というものですが、それを説明しようと、私はいろいろな学生に声をかけて、あえてフリーハンドの、さまざまな正方形を集めたんです。最終的にそれらをデータ化し、ストップモーションアニメのように仕立ててプレゼンをしました。そんなときに、書店で偶然出会ったのが、"正方形の版型"の本『線の事件簿』でした。
足跡、航跡、光跡、飛後、筆跡など、この本には、形あるいは内容が似た軌跡図が見開きで左右に配置されています。そこに著者である松田行正さんが、その動きを象徴する言葉を添えていました。さらにそれぞれの線についての解説もあり、例えば「鳥が飛ぶ軌跡の線はプログラミングされている」といったことが書かれていたんです。自然の中にあるさまざまな線にもなるべくしてなった理由やその背景にストーリーがあることに気づかされました ...