昨年12月、秋葉原にスーパーマーケット「福島屋」がオープンした。福島屋は、食材の目利きが吟味した食材を扱うお店として、地元の羽村市で長年支持されてきたスーパーだ。新たに都心型の店舗を出店するにあたり、店舗デザインをどう考えていったのか。担当した建築家の長坂常さんに話を聞いた。



昨年秋葉原UDXにオープンしたFUKUSHIMAYA TASTING MARKET AKIHABARA。店内は空間は余白が広く取られており、スーパーにありがちな圧迫感がない。
違いを理解してもらえる空間とは何かを考えた
スーパーマーケット「福島屋」は、都心から1時間半ほどかかる郊外、青梅線の羽村駅に本店を構えている。創業は1971年で、有機栽培や無農薬無肥料による野菜など独自のセレクトで優れた商品を揃えるスーパーとして知られる。その食のセレクトの背景には消費者・生産者・小売り流通業者の"三方よし"(共存共栄)という経営コンセプトがあり、スーパーの経営を通じて地元農家の支援なども行いながら、独自の成長を遂げてきた企業だ。
こうした経営思想が共感を呼び、近年では都心部からの出店要請が増え、都心型店舗も持つようになっている。昨年12月に秋葉原UDXにオープンした「FUKUSHIMAYA TASTING MARKET AKIHABARA」は、六本木店に続く都心型店舗の第3弾となる。
店舗は通りからやや奥まった場所にエントランスがある路面店で、入ってまず左手にあるのが人気の惣菜売り場。スイーツやベーカリー、そして弁当やおかずが並ぶ。その奥には、オープンキッチンが店舗空間をぐるりと囲むように見えている。
福島屋には、「お惣菜は"有料試食"である」というコンセプトがある。福島屋のお惣菜は、店内で販売されている米や調味料、生鮮食品と同じものを使って作られており、お惣菜はその味見をするためのものだという考え方だ。それが店名に「TASTING MARKET」を標榜している理由でもある。このお弁当には、形が悪いなどの理由で廃棄されてしまう野菜も使われており、農家支援(生産者支援)の一端の意味合いも担っているという。
調味料や生鮮食品売り場には、福島屋の食のプロが目利きし、吟味した食材が並ぶ。POPやラベル、売り場には余計や飾りは一切なく、ごくシンプルだ。空間にも十分な余白があり、スーパーにありがちな圧迫感がなく、リラックスしながら店内を回れる ...