「この国は、女性にとって発展途上国だ」というコピーで、昨年世の中に波紋を投げかけたポーラのCM。その第2弾が公開され、再び話題を呼んでいる。「この国には、幻の女性が住んでいる」で始まる今回のCM制作の意図について話を聞いた。

テレビCM「この国には、幻の女性が住んでいる」。
企業広告でもあるリクルート広告
「この国には、幻の女性が住んでいる」。静かなナレーションからはじまり、受付で働く女性や、宴会で男性社員にビールを注ぐ女性など、社会が描いてきた女性像=“幻の女性”が次々に映し出されていく── 。化粧品メーカーのポーラは今年8月、女性たちの葛藤と置かれている現実を浮き彫りにするCMを制作した。ポーラのCMといえば、昨年、賛否両論を巻き起こした「この国は、女性にとって発展途上国だ」というコピーが記憶に新しいが、今回のCMはその続編として制作されたものだ。
ポーラがこれらのCMを制作した背景には、同社の2029年に向けた社会ビジョンがあった。ポーラ 宣伝部 コーポレートコミュニケーションチームの田畑圭子さんは「2029年にポーラは100周年を迎えます。その頃どんな社会であれば人々が楽しく過ごせるのか。また、ポーラはその中でどんな存在であるべきか。社内で日頃からディスカッションされているテーマです。女性だけではなく、男性も女性も多様な人がお互いのあり方を受け入れられるのが、美しい社会のあり方だと思っています」と話す。
その実現のために今のポーラができることが、まず女性が活躍する社会を実現することであり、その信念は、ポーラの女性販売員であるビューティディレクターが活躍する社会と通じる。ここから、「企業広告とリクルート広告を1つとして表現できるのではないか」と考え、ライトパブリシティ、もりの両社に相談を持ちかけた。
ライトパブリシティ コピーライターの山根哲也さんは「単に販売員を募集するリクルート広告ではなく、志を同じくする人を集めようという考え方で制作していきました」と話す。クリエイティブディレクターの原野守弘さん(もり)からは、「ジェンダーイクオリティの視点から、CMを通してすべての女性をエンパワーしたい」と方向性が示されたという。
昨年、第1弾のCM「この国は、女性にとって発展途上国だ」を公開すると、想像以上の反響があった。
「SNS上でこれほど議論が巻き起こるとは思いませんでした。広告を通じて企業の考えを出すことで議論が起き、肯定的に捉える方も否定的に捉える人もいて、これが今の社会の状況なのだと、私たち自身も大きな学びがありました。このCMの中では、女性はこうするべき、男性はこうであるべきと強制はしていません。あくまでポーラはこう思います、とひとつの『問い』を投げかけるスタンスです。賛否両論含めすべての反響を、今の社会を生きる人の思いであると、素直に受け止めさせていただきました」(田畑さん)。
社会の状況に対して「どんな見出しをつけるか」を考えた
今年公開された第2弾は、「この国には、幻の女性が住んでいる」をテーマにしている ...