ユニリーバがはじめたユニークな社内制度「着帽手当」は、帽子を被って働く人に対して頭皮をケアする手当としてシャンプーの現物支給をするというもの。キャンペーンの核となった、この制度のネーミングについて聞いた。
商品ではなく制度を広めるPR型キャンペーン
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングが展開する男性用頭皮ケアシャンプーブランド「CLEAR」は、昨年6月に世界初の社内サポート制度「着帽手当」プロジェクトを発足した。着帽手当とは、帽子をかぶって働くスポーツ選手や社員に対して、企業が頭皮をケアする"手当"として「CLEAR」を現物支給する制度だ。ソフトバンクホークスや四国アイランドリーグなどのスポーツチームや、三和建設、ドミノ・ピザなどの企業が導入している。
企画を担当したアサツーディ・ケイのクリエイティブディレクター玉川健司さんは、「CLEARは2014年に日本に入ってきたブランドです。後発の国内シャンプー市場で目立つには他ブランドがやらないことをしなければと考えました。最初は、『着帽している人たちは頭皮へのダメージを気にしている』とインサイトを想定し、購買時にインセンティブをつける案でした。そこから発展し、着帽して働く人にとっての"手当"を企業内に制度としてつくる案にたどり着いたんです」と話す。
社内制度に落とし込んだ理由は、当時、世の中が「働き方」に目を向け出した時期だったからだ。社会的な関心を集める「働き方」の話題と組み合わせることで、注目を集められると考えた。
「着帽手当」の名前を考えたコピーライターの青木一真さんは「この4文字に着帽する人のインサイトも企画の視点も、新しい流通チャネルであることもすべてが込められています」と話す。「手当」と意外な言葉を組み合わせることで、キャッチーにもなる。調べてみると、国内には日常的に帽子をかぶる人が1千万人以上いることがわかった。将来的に「着帽市場」とでも呼べるような新たな市場向けの販路を、ドラッグストアの購入層とは別につくる気持ちで臨んだという。
広告のビジュアルを担当したアートディレクターの岡本祥平さんは、「真面目な制度なのですが、過度に真面目に見えすぎないように気をつけました。着帽手当を導入した企業がカッコよく見え、そこで働いている普通の人たちがヒーローに見えるキャンペーンになるよう、意識してデザインしています」と話す。
日本の社会に制度として根付かせたい
着帽手当という新しい言葉を広げるにあたっては、コミュニケーションディレクターの贄田翔太郎さんが中心となってPRキャンペーンを設計した。「ポイントは、この制度を導入してくれたチームや企業から情報を発信してもらうようにしたことです。メディアに出る際も、着帽で働く人のリアルな声を集めて紹介してもらうなど、できるだけ第3者が着帽手当を望んでいるという声を伝えることに注力しました」 ...