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海外広告賞から読み解く 世界のクリエイティブ

世界の同世代と戦って僕たちが感じたこと

今年のヤングカンヌには、日本から6チームが参戦。残念ながら入賞は果たせなかったが、彼らは世界の同世代の若者と戦い何を感じたのか。フィルム部門、プリント部門、PR部門、サイバー部門計4部門6人の参加者に話してもらった。

ヤングカンヌとは:

ヤングライオンズコンペティション(通称ヤングカンヌ)は、カンヌライオンズ内で行われる30歳以下*を対象としたコンペ形式のプログラム。各国の代表2名が1チームで参加し、現地でオリエンされた課題に対し、48時間内に映像や企画書を作成し(またはプレゼンテーションを行い)、ゴールド、シルバー、ブロンズを決定する。
※ 2016年より対象年齢が28歳から引き上げられた。

(左から)フィルム部門 青木美菜代さん、フィルム部門 水本隆朗さん、プリント部門 橋本暦さん、
PR部門 中川諒さん、サイバー部門 小川達也さん、サイバー部門 葛原健太さん。

「8年目の正直」で本戦参戦

中川:僕と山脇卓朗のPR部門ペアは、国内予選に2人で合計28回取り組んで、今回ようやく本選出場権を獲得しました。年齢的にも割と"ギリヤング"なペアです。僕がプロモーション出身で海外作業も多く、山脇が戦略プランニング出身なので、戦略と戦術の両方が重視され、かつ英語での資料作成・プレゼンが必要なPR部門に注力しました。

短時間で「勝てる企画」をつくるという特殊な競技に対応すべく、事前に「企画レシピ」を作って臨みました。過去3年分のヤングカンヌの予選と本選、PRライオンズの受賞作品を、すべて課題とエグゼキューションに分解したものです。

橋本:デザイナーの私とプランナー小島翔太のプリント部門ペアは、昨年から2年連続で出場しました。中川さんたちの「企画レシピ」には及びませんが、去年は過去問をひたすらやり、受賞作と比較して、このアイデアだったらきっとこう評価される、こっちのアイデアはこの審査員だったら選ばなそう…などと2人で悶々と分析していました。

ただその結果、発想に慣れることはできたのですが、自分たちが一番大切だと思うものよりも通りそうなものを優先させて軸がブレた気がしました。なので今年は「ヤングカンヌだから」という気持ちで傾向と対策をするのではなく、普段の仕事と同じ気持ちで、単純に2人が"グッとくるもの"で臨もうと決めていました。

水本:フィルム部門は電通と博報堂のペアなので不思議に思われることも多いんですが、筑波大学の先輩後輩の関係なんです。電通2年目プランナーの青木さんと博報堂2年目デザイナーの僕でペアを組みました。僕たちも中川さんと同じように過去の受賞作を片っ端から集めて、どういうものが受賞しているのかの傾向を調べ、さらに過去に日本代表になった方に話を聞いてチェックポイントをまとめました。

(1)自分事化できているか(2)狭い話題になっていないか(3)オリエン全体を包んでいるか(4)すべての国がわかる話題か(5)ハッとするか(6)実現可能であるか(撮影があるため)の6つです。これらを元に傾向と対策を繰り返しましたが、橋本さんが言うように過去の受賞作の傾向や審査での通りやすさなどを考えすぎて迷いが生じてしまい、自分たちの持ち味が鈍ってしまった反省はあります。

葛原:サイバー部門の僕と小川は同じ会社で働き、普段からよく話をする仲です。お互いにこれまでさまざまな部門に挑戦してきましたが、僕はアプリを作っていた経験があるのでサイバー部門で挑戦することにしました。ペアの相手はアイデア出しの段階でカジュアルに話せる人がいいと思ったので、小川に声をかけ、2人で代々木公園を歩きながら案出しをしたりしました。ヤングカンヌは過去の経験から「既知のモチーフをずらして、そのズレの背景に課題がある」という構造にすることが効果的だと思ったので、そのフレームで臨みました。

小川:4年前までは実装を伴うインタラクティブなWeb広告の部門だったのですが、3年前からデジタルのインフラを使ったソリューションの部門に変わったので、過去事例が少なく、対策に苦戦しました。

葛原:例年ヤングカンヌのサイバー部門では、審査委員が本戦の審査を終えて疲弊した状態でヤングの審査をするため、シンプル&ボールドなものを目指せと言われてきました。そのつもりで取り組んできたのですが、今年は本戦の審査員ではない人が審査を行うと。だから全員元気だったんですよね(笑)。ここは想定外でした。

世界との差はあったか、どこに感じたか

中川:PR部門の審査員は、海外のPRエージェンシーの人たちです。言語そのものもそうですが、言葉の定義や使い方が違うことがあるので、ブリーフの段階で何度も審査員に、言葉の定義を細かく確認するようにしました。PR部門は他の部門と違って、英語プレゼンと質疑応答があります。短時間での準備は想像以上にストレスフルな体験で、1日に何度もトイレに行きました(笑)。

結果発表のときは、願掛けも込めて、一番前の真ん中の席で、iPhoneとGoProで受賞の瞬間を撮影しようと待ち構えていたのですが、最後まで「Japan」は呼ばれず…。その瞬間は想像を絶する悔しさで、しばらく動けなくなりました。

水本:悔しいですよね。フィルム部門のオリエンは「違法ダウンロードが増える中、音楽とそのクリエイターはサポートすべき存在であると議論が起こるWeb動画」というものでした。音楽という身近なものだったので、シンプルに伝わるようなアイデアは思いつきやすかったのですが、これではたして議論は起きるだろうかと、"議論"のほうに引っ張られてすぎてしまったと反省しています。受賞した作品を見ると、議論云々よりも、メッセージがシンプルに伝わるかどうかだったのかなと。

青木:議論に加えて、今年は「1カ月で100万回再生、2万シェア」と、昨年にはないKPIが設定されたこともあって、どの案で行くかかなり迷ってしまいました。

橋本:プリント部門の課題は「貧困などの世界中の課題を他人事ではなく自分事として捉えて解決を目指す『Global Citizen(世界市民)』の活動に共感し、参加する行動を促す」でした。ただ単に「あなたはGlobal Citizenです」と言っても共感されないので、どう口説けば納得できるか?どう言えばエモいか?と朝方まで話し合っていました(笑)。さんざん悩んだ結果、私たちの答えは「世界市民の根本的な考え方は"他者への思いやり"を持つことである」ということ。

そのメッセージを伝えるのに、それぞれが平和を唱えていながらも世界を分断している宗教にスポットを当てました。結果発表後、審査員に私たちの案はどうだったかと話を聞くと、「アイデアはいいが、アクティブさが足りなかった」と言われました。

メッセージに執着しすぎて行動を促すまで定着できていなかったな、とひたすら反省しました。ただ世界との差を感じたか?と言われると、答えはNOです。メッセージを強く伝える上で言葉のハードルは正直あります。でも、それは大きなハードルではないと思っていますし、デザインに関しては、カンヌ全体を見ても日本のデザインはやはり美しいです。

ど真ん中のアイデアを強く表現する力が評価

青木:フィルム部門はブラジルチームのゴールド作品が圧倒的に強かったです。違法ダウンロードが進むにつれて、演奏中のバンドからギター、ベース、ドラムと次々に消えていき、最後に「みんなは音楽を必要としている。音楽はあなたを必要としている。」とコピーが入る作品です。シルバー、ブロンズもすごく映像がきれいに撮られていて、シンプルに研ぎ澄まされていました。

特にゴールドがすごいと思ったのは、実現力です。制作時間が1日しかない中で、歌をつくり、楽器店を押さえて、バンドメンバーの4人をキャスティングすることがどうしたらできるんだろう?と。

水本:最初からバンドメンバーを用意していて、どんな課題が来てもバンドネタに落とすと決めていたのでは…と思ってしまうくらい。表彰式でブラジルチームだけ5、6人ぐらい壇上に登っていたけど、あの謎の人たちがそうだったのかな(笑)?

青木:フィルム部門は、アウトプットの実現可能性、アイデアの実行力も結果に関わってきますよね。

小川:僕は日本のアイデアが世界に届かないわけではないと思っています。サイバー部門の課題商品は、アフリカのエイズ対策プログラム支援の寄付のために開発された、メーカー横断型ブランド「(PRODUCT)RED」です。このブランドの購買者とREDのつながりを作り出し、最終的な目的として、購買者のメールアドレスかSNSアカウントのフォロワーを獲得することが課題でした。

ゴールドを獲った企画「(THE NEXT)RED」はクラウドファウンディングに登録する製品開発プロジェクトにREDの名前をつけることで開発支援を受けられ、さらにRED仕様の製品を制作ができるという、開発者・支援者・REDの三者を結びつけるプロジェクトでした ...

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