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海外広告賞から読み解く 世界のクリエイティブ

設立5年目で定まったイノベーションの定義

カンヌライオンズに「ライオンズイノベーション」ができて、今年で5年。通常カンヌでは、部門のクライテリア(評価基準)が定まるのに約5年を要すると言われる。その5年が経過したライオンズイノベーションの今年の結果から何が読み解けるのか。電通 鈴木瑛さんが解説する。

ライオンズイノベーションのファイナリストプレゼンテーションが行われる「スクリーン2」ルーム。審査員との活発な質疑応答が行われた。

カンヌで一番ホットな小部屋

今年のカンヌで一番ホットだった場所をご存知だろうか?灼熱の太陽が燦々と照りつけるYouTubeビーチ?ライオンたちが魅惑の輝きを放つルミエール・シアター?綺羅星のようなセレブやスタークリエイターのセミナーが行われるドビュッシー・シアター?どれも間違ってはいないのだが、個人的には、会場の片隅にある100人も入れば満杯の「スクリーン2」と書かれた小さな部屋を推したい。

ここはライオンズイノベーションのイノベーション部門のファイナリストプレゼンテーションが行われる場所。イノベーション部門は他の部門とは異なり、現地で審査員の目の前でプレゼンテーションと質疑応答を行い、受賞作を決めるスタイルとなっており、なかなか見ることができない他社の本気のプレゼンテーションを見られる。この薄暗いスクリーン2が、ファイナリストと審査員が真剣勝負の火花を散らすカンヌで一番熱い場所である。

お金を払っても見ることができない他社のプレゼンテーションを、正々堂々と見ることができるというだけでも、このファイナリストプレゼンテーションには価値がある。さらにそのプレゼンテーションに対する審査員からの厳しい指摘の数々。審査員もエージェンシーからだけではなく、事業会社やベンチャーキャピタル出身者が多く、アワードではあるものの審査はリアルなビジネスかと見まごうばかりの白熱モード。こんなエキサイティングなプレゼンテーションショーを見逃す手はないと、今年も観戦してきた。

このようにファイナリストプレゼンテーションはとてもホットなのだが、今年のイノベーション部門は受賞結果もとてもホットだったように思う。というのも、2013年にカンヌライオンズのイノベーション部門として立ち上がってから5年。ようやくカンヌにおけるイノベーションの定義が明確になってきたように感じられる受賞結果だったからである。

カンヌにおけるイノベーションの評価軸

今年のイノベーション部門受賞作から見えてきた3つの評価軸は以下の通りである。受賞作を紹介しながら、その心を一つひとつ紐解いていきたいと思う。

    1. 世界を変える

    2. みんなで変える

    3. ずっと変える

1. 世界を変える

本年度のイノベーション部門において重視されていたことは、新しい世の中、今までなかった概念を創り出すかどうかであったように思う。今年のイノベーション部門ゴールドの「TILT BRUSH」(Google)を見てみても、3Dお絵描きが世の中に定着することで、新しい表現が生まれていくということが容易に想像できる。このように、導入されることによる将来的なストーリーとしての伸びしろが新しい視点だったと言えるかもしれない。

ゴールド受賞「TILT BRUSH」(Google)
Google VRチームが開発した3D空間に立体を描くことができるペイントツール。

2. みんなで変える

本年度のイノベーション部門において重視されていた2つ目の要素は、世の中をオープンに変えるかということであったように思う。それは、参加性があり多くの人が世の中を変えることに参画できるかというだけでなく、オープンイノベーションで大きく世界を変えるかどうかという視点だ。

ゴールドを受賞した「LOS SANTOS PRIDE」(Stockholm Pride)を見ても、ゲームのMOD(改造用データ)を用いて、世界中にスケールしていく可能性と、世界中の技術者をつないで開発したというオープンイノベーション性が評価されていた。

ゴールド受賞「LOS SANTOS PRIDE」(Stockholm Pride)
ゲーム中の人たちをゲイ・パレードを応援するファッションに着替えさせたり、ゲーム中にゲイパレードを登場させるMOD(ゲーム用の改造コード)を公開・配布した。

3. ずっと変える

本年度のイノベーション部門において重視されていた最後の要素は、世の中を長期的に変えるかということであったように思う。どんなに素晴らしいプロジェクトでも一時の話題づくりに終わらない継続した取り組みであるか(なりうるか)という視点が評価されていた ...

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