今年2月に東京・青山から神宮前に移転した、クリエイティブエージェンシーPOOL。3階のワークフロアでまず目に飛び込んでくるのは、中心にある大きな樹だ。流木と生きた植物を巧みに組み合わせて作られている。2階の会議室フロアには、趣向を凝らした大中小の会議室があり、さまざまな古材のパーツを組み合わせ、オリジナルの空間が作り上げられている。
「実はこのオフィスには図面がないんです」と話すのは、POOL代表の小西利行さん。その理由は、富山で活動する大工の細野将秀さんに一切の設計と施工を任せたからだ。以前金沢を訪れた際に『天才的な大工がいるが会わないか?』と知人から細野さんを紹介され、その才能にすっかりほれ込んだ。「この人には思い切って任せた方がカッコよくなる」と感じ、部屋数と最小限の要望を伝え、後は自由に作ってほしいと言った。このオーダーを受け、細野さんは、3カ月半このフロアに寝泊りしながら一人で空間を作り上げていったという。
完成したオフィスを見た小西さんは「まず驚きました。球を思いっきり投げていいと言ったら剛速球で来た感じ(笑)」と話す。「今らしい自由さとクリエイティビティがあるオフィスになったと思います。来社したクライアントにも僕らがどんな感覚を持った会社であるかのいいプレゼンテーションになります」。「何をするかより、誰とするかこそが最高のクリエイティブディレクション」――そんなディレクションの極意を体現したオフィスと言えそうだ ...