編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
村上慧『家を せおって 歩いた』
(夕書房)
![](https://mag.sendenkaigi.com/brain/201707/images/113_01.jpg)
- 装幀/佐々木暁
本書は、美術家・村上慧さんが自身で制作した発泡スチロール製の家を背負って各地を歩き、「移住を生活」した1年間の日記を書籍化したもの。「日記を読み始めると、村上さんは“考え方の人”だとすぐにわかります。たくさん歩く=たくさん考える、だったんですよね」と、装幀を手がけた佐々木暁さん。村上さんと初めて会って話したときに、村上さんの家で使っている素材をモチーフに装幀をつくるという方向性が見えてきた。
装画は村上さんの家の輪郭線をデフォルメして描いている。当初はこの本自体を家の建材にしてしまおう、とまで検討していたという。「日記が内面化しすぎないように、装画は村上さんではなく、第三者である僕が描きました。村上さんの家は、現実には存在しない“輪郭線”で描かれていますけれど、ふと考えると、すごい示唆に富んでいることなんですよね。また、この本は編集者・高松夕佳さんがお一人で設立した夕書房の大切な1冊目でもあり、それぞれの人生が交錯してましたね」。カバーと表紙には家の素材に近い質感の紙を使用。まさに村上さんの家を体現する本となった。
CD
三戸なつめ『なつめろ』
(SMAR)
![](https://mag.sendenkaigi.com/brain/201707/images/113_02.jpg)
![](https://mag.sendenkaigi.com/brain/201707/images/113_03.jpg)
- AD/矢後直規
- 撮影/濱田祐史
- ST/北澤momo寿志
- HM/稲垣亮弐
三戸なつめさんのファーストアルバム「なつめろ」のジャケットは、これまでのかわいらしさ、ユニークさを打ち出したデザインから一転。舞台は荒野、赤いドレスを着て、どこか大人びた表情の三戸さんが印象的だ。「テーマはタイプスリップです」と話すのは、アートディレクションを手がけたSIX矢後直規さん。「中田ヤスタカさんがつくった音楽が、いつか懐かしく聴こえる日が来る。そんなイメージから、未来と現在の時空を三戸さんが行き来する、SFのような世界をテーマにしました」。
ジャケット全体に描いたカラフルな円孤は、タイムマシンが時空を進むときに、時計がさまざまな速度やタイミングでくるくると回っているイメージ。スタイリスト北澤momo寿志さんに赤い衣裳をお願いしたのも、「懐かしさを感じる色は赤」と考えたからだ。そして、小道具にはラジカセや8mmカメラを使用。ブックレットには、三戸さんと同じ髪型、同じ衣裳の老齢の女性も登場する。このようなシチュエーションのもと、撮影時には三戸さんに自分らしく、自由に動いてもらったという。その結果、これまで見えにくかったアーティストとしての三戸さんの魅力が感じられるジャケットとなった ...