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デザインの見方

木彫りの熊から掘り起こされた新しいデザインの芽

野間真吾

野間さんのオフィスに置いてある、ハワイから持ち帰った木彫りの熊。

木彫りの熊に出会ったのは、佐藤卓デザイン事務所に入社して1年目。社員旅行で訪れたハワイのノースにある骨董屋の棚に鎮座していました。確か300ドルくらい。埃まみれの割にいい値がついているのが印象に残りました。そして翌年、同じ骨董屋に行ったら、同じ場所にこの熊がいました。値段も300ドルのまま。それを見たとき、何か運命のようなものを感じてしまったんです。でも現実的に持って帰るのは難しく、その年もお店で見るだけでした。

それから2年後。またまたその骨董屋を訪れると、熊はやはり同じ場所に同じ値段のままいました(笑)。店主にディスカウントを交渉したところ、「ヴィンテージは時間が経つほど高くなるんだ、値段を350ドルに上げないとね」とアメリカンジョークで切り返される始末(笑)。次に来たら値上がりしているかもしれないと思い、僕はこの重い熊を日本に持って帰る決断をしたんです。

日本に持ち帰った後にわかったのですが、実は日本製でした。そこで、なぜ僕はこの熊に惹かれたのか、あらためてその理由を考えてみました。その一つには、親戚の茶の間にあるテレビの上ではなく、ハワイの青い空の下にある骨董屋で見たこと。つまり、いつもと違う文脈で出会うことで、先入観なしにフラットな目でモノと対峙し、見落としていた魅力に気づいたのではないかと。

この熊を家に置いてから、面白いことが起きました ...

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