昨年から今年にかけて、設立から10年目を迎えたデザインオフィスやクリエイティブエージェンシーが多く見られます。10年前に独立した人はどんな背景から、どんなことを考えて、自分の場所を築いたのか。そして、この10年の間にどんな変化があったのか。第5回目は、canariaの徳田祐司さんにお話をお伺いました。
現場で働く社員が幸せにならなければ、会社が存続する意味がない
──設立当初、目指していたことは?
電通を辞めた理由は明快で、広告だけではなく、広い意味でデザインをやりたくなったから。電通在籍時にオランダのケッセルスクライマーに1年半在籍したことも大きく影響していると思います。
ケッセルスクライマーでは企画に入る前に、クライアントとしっかり手を握り合うためには、何をすればよいのかをまず話し合う。その上で何が必要で、何が足りないのか、目的を明確にし、具体的な表現へと落とし込んでいく。そのやり方を学び、デザインが世の中に対してできることがもっとあることを知って、帰国後は自分の経験や考え方を広告以外でも広げていける方法を考えるようになりました。
設立初年度は電通時代の仕事がほとんどでしたが、2年目に始まった「い・ろ・は・す」が、canariaにとって転機になりました。これはコンセプトから商品開発、パッケージ、広告まですべてを手がけた仕事。うれしいことに商品がCVSのビバレッジカテゴリーでNo.1になり、業界のゲームチェンジャーとして、その在り方をコンセプトとデザインと広告で提示できました。まさにcanaria 設立時に目指していたことを実現できた仕事です。
──いまスタッフはどんな構成ですか。
最初は1人でスタートし、半年後に4人体制になりました。そのときのメンバーはいまも在籍しています。デザイナーは僕を入れて10人いるのですが、最近は長期にわたる仕事が増え、情報量も多く、デザイナーがすべてに対応することが難しくなってきました ...