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デジタルとリアルの境界線をあいまいにしていく

「超歌舞伎」ニコニコ超会議

「ニコニコ超会議2016」で歌舞伎俳優の中村獅童と人気ボーカロイドの初音ミクが共演を果たし、話題を呼んだ超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』。伝統芸能とテクノロジーの融合は、どのようにして果たされたのか。

超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』。特殊スクリーンにプロジェクションされた初音ミクと生身の中村獅童が舞台上で共演する。初音ミク『千本桜』をベースに、千本桜を守るために佐藤忠信(中村獅童)と美玖姫(初音ミク)とが邪悪な青龍に立ち向かうストーリー。

なぜニコ動が「歌舞伎」をはじめたのか

昨年の「ニコニコ超会議2016」で一際注目を集めた演目。それが歌舞伎俳優の中村獅童とボーカロイドの初音ミクが共演した超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』だ。2日間で来場者とニコニコ生放送視聴者の合計約16万人以上が熱狂したという伝統とテクノロジーのコラボイベントはどのようにつくられたのか。

それを紐解くためには、まずニコニコ動画の誕生から現在までの経緯を知る必要がある。ドワンゴ 取締役CCO ニコニコ超会議 統括プロデューサーの横澤大輔さんは「ニコ動は動画共有サイトであり、また同時にデジタルの中のプラットフォームです。人と人、企業と企業など、これまでにさまざまな出会いをつくり、化学反応を起こしてきた場です」と話す。

ただ、当初は多様性のあるコンテンツであふれていたニコ動も、近年は人気のあるジャンルに細分化、集約化される傾向にあり、横澤さんはそれを懸念していた。「合理化と効率化はデジタルのよい点であり、プラットフォームの宿命です。とはいえ、エンターテインメントはそことは真逆にあるものなので、どうやってバランスをとるかを考えていました」。

そこで「デジタルとリアルの境界線をなくし、両者が融合したプラットフォームをつくればいいのではないか」と仮説を立て、立ち上げられたのが「ニコニコ超会議」である。「会場である幕張メッセをリアルのプラットフォームと考え、そこにブース=コンテンツを置くという発想で、これまでデジタル上でやってきたことをリアルの場に置き換えてみたんです」。

超会議には、ニコ動らしいサブカルコンテンツだけでなく、これまでニコ動とは縁遠かった、伝統芸能や政治といった新たな要素も積極的に誘致した。自分と違う人との出会いの場を創出したいとの思いからだ。

最初に超会議で行われた伝統芸能は相撲の巡業「大相撲超会議場所」で、約250名の力士が会場に設置された土俵で取り組みを行った。その結果、「超会議で初めて相撲を見た若者が両国の5月場所に詰めかけたそうで、弊社が日本相撲協会から感謝されたことがありました。それをきっかけに社内に" 伝統と若者を繋げる"というミッションが芽生えました」。

超歌舞伎を生む直接のきっかけとなったのは、『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』の観劇だったという。国民的人気マンガ『ONE PIECE』と四代目市川猿之助が生み出した「スーパー歌舞伎Ⅱ」が融合した舞台である。「『ワンピース』を知っているけれど歌舞伎は見たことがない人、また逆の人もどちらも楽しめる演目になっていて、見事だと思いました。終了後は老若男女の観客全員がスタンディングオベーションで、ここにエンターテインメントの何たるかが集約されていると感動しました」。

観劇後、横澤さんは松竹に「歌舞伎の『ワンピース』をニコニコ超会議に持ってきたい」と直談判した。「最初は日程の関係で無理と断られてしまったのですが、話しているうちにネットで流行っているコンテンツに初音ミクの『千本桜』があり、歌舞伎の演目『義経千本桜』とひょっとして融合できるのでは?と盛り上がったんです。そんな話をしていたら、『じゃあプロットを書いてみてもらえますか』と言われまして(笑)」。

歌舞伎のプロットなど当然書いたこともなかったが、周囲の作家ブレーンたちの力も借り、初音ミクの「千本桜」の世界観をベースにプロットを作成。松竹に提案したところ、面白いと快諾された。

演出は、これまで初音ミクのライブでやってきた、初音ミクを透過ボードにプロジェクションする形で行うつもりだったが、リアルな歌舞伎俳優を組み合わせてできたらという思いもあった。松竹にその意向を伝えると、「それなら、新しいものに理解がある中村獅童さんがいいのではないか」と提案があった。こうして、歌舞伎とテクノロジーのコラボ作品が動き出した ...

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