VR元年と呼ばれた2016年を経て、いよいよ実現化が進んできたVRコンテンツ。各社も今後のVRビジネス拡大を見越し、専門部署を立ち上げるなど本腰を入れている。VRは広告コミュニケーションをどう変えるのか。
全国に「VRシアター」を設置 VRの普及に取り組む
電通は昨年11月にグループ横断組織「Dentsu VR Plus」(電通VRプラス)を立ち上げた。そこで取り組んでいる活動の一つが、全国での「VR THEATER」の開設だ。ネットカフェなど既存店舗にVR視聴用の機器を設置して誰でも手軽にVRコンテンツに触れられるようにしようとするものだ。
「今後の普及に弾みをつけるにあたり、体験の場づくりが大切だと我々は考えています」と電通 ビジネス・クリエーション・センター次世代領域推進部 部長の足立光さんは話す。現在全国約145店舗に設置し、体験できるコンテンツには『攻殻機動隊』や、電通独自のコンテンツとして開発した『進撃の巨人「哮」』、旭山動物園のVR体験に加え、江崎グリコの広告型コンテンツなどもある。
VRコンテンツを体験する方法は、現在大きく分けて2つある。一つはこのVR THEATERのように、専用の機材がある場所(常設拠点やイベントスペース)に来て体験してもらう方法。もう1つは、Webブラウザなどを通じてユーザーが手持ちのデバイスでVRコンテンツを楽しむ方法などだ。
オキュラスリフトなど高級なヘッドセットはハイスペックPCと合わせて20万円近くするため、個人利用には普及しにくかったが、昨年発売されたPlayStationVRは約5万円と価格が下がり、普及に弾みがかかると考えられている。
そして、今後の普及に向けたソフト面の進化のキーワードとして挙げるのが「ソーシャルVR」だ。「最近は友だち同士でひとつのVR空間を共有して楽しむことができるようになってきました。VR空間でのコミュニケーションも、簡単なジェスチャーから、言葉のやりとりもできるようになり、遠くにいる人同士がVR空間内で1つのライブ会場に落ちあうといった使い方ができるようになってくると思います」。
さらに、今ではソーシャルメディアを通じてVR空間を共有できるようになってきた。これが進化するとどうなるか?「例えば、VRで火星空間にいる時に、友人からFaceTimeなどで電話がかかってきたとします。その際、自分のスマホを取り出すと、VR空間上にも同じスマホが登場します。そのスマホを使って、友だちに『今火星にいるんだよ!』と周りの景色を見せたり、火星で友だちと一緒にスマホで写真を撮って、Facebookにその写真をポストできるようになるでしょう」。
そうなれば、VR空間をより多くの人に体験してもらうことが可能になる。限られた数の人しか体験できないというVRの課題も自然と解決されるだろう。VRのソーシャルメディア化、あるいはソーシャルメディアとの連携は、普及の次のステップにつながるカギとなりそうだ。
制作は映像というより「舞台演出」に近い感覚で
博報堂と博報堂プロダクツでは、昨年10月にVR・AR専門ファクトリー「hakuhodoVRAR」を設立した。プランニングにも制作にも独自の技術やノウハウが必要とされているこの分野で、完全内製の体制を整え、その知見を社内に蓄積する狙いだ。
例えばVRの映像の特徴は「360ºのフレームのない世界」だが、その中でユーザーに視線を動かす自由を味わってもらいつつ、ストーリーの体験上必要なタイミングで、見てほしいものを見てもらう必要がある。「そのために …