さる4月4日から9日まで、ミラノサローネが開催された。不景気やテロの影響もあるのか、例年に比べて人が少ないように感じたが、それでも世界最大規模のデザインイベントはパワフルだった。その中で評価を得ていた日本勢を取材した。
「Electronics Meets Crafts:」で出展したパナソニック
今年でサローネ出展9回目を迎えるパナソニック。LEXUSの10回目に続き、継続的に出展している数少ない日本企業だ。"デザインで明快に価値づけする企業"としてのイメージが、着実にかたちづくられている。今回のテーマは「Electronics Meets Crafts:」。京都の伝統工芸の後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」とともに、"人の五感や記憶に響くインスタレーションとプロトタイプ"を出展した。
アプライアンス社副社長を務める小川理子さんは「伝統工芸にモノ作りの原点があると捉え、そこを含めた感性価値をパナソニックとして表現することに力を注いだ。技術とデザインを一体化させたものを、暮らしの中で慈しんで使ってきたのが日本の生活文化。そこに息づく家電のありようを提案していきたい」と語ってくれた。
会場は、18世紀に立てられた歴史的な建造物である国立ブレラ美術アカデミーの中庭パビリオンと地下回廊。中庭パビリオンの第一会場では、西陣織でできた巨大スクリーンに、日本をテーマにしたダイナミックな映像が映し出された。壁一面を彩った映像はもちろんのこと、照明、振動、風、音響など、パナソニックが持つ最先端の技術を盛り込んだインスタレーションは、迫力を持って心象風景に訴えかけるもの。西陣織の繊細な光沢や凹凸が映像に深みを与えていた。
一方、別棟の地下に降りていくと、真っ暗な第二空間が――長い歴史を持つサローネの中で、会場となるのは初めてという貴重な場だ。400年近い歴史を刻んできた建造物ならではの深みと重みが、濃密な空気を生み出している。照明が灯されると、奥に長く長く続くトンネルのような空間が浮かび上がって、効果的な演出が施されている。
ほのかな照明のもと、長いテーブルに展示されているのは、パナソニックのデザイナーと「GO ON」が組んだ作品の数々。4名のデザイナーが、6名の「GO ON」のメンバーと1年4カ月をかけ、創り上げたものだという ...