クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、キーボード奏者であるエマーソン北村さんに仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『東京1934~1993』
桑原甲子雄(写真・著)
(新潮社フォト・ミュゼ)
僕が音楽を作る時には、いつも頭に浮かべていることがひとつあって、それは「過去のどの一瞬も、今とつながっている」というイメージだ。パンクから入った僕がロックステディや戦前のジャズといった古い音楽に惹かれたのも、その演奏には遠く離れた時代の、人が生きた瞬間をありありと伝える力があるからだ。
優れた本にも時を保存できる力があって、そこには必ず作者の「透明な意志」とでも言うべきものが働いている。高野文子さんの漫画や広瀬正さんの「マイナス・ゼロ」、そして戦前の東京で自宅から半径数キロ以内の何気ない写真を撮り続けた、この写真家の作品集のように。
既に消えてしまった街の通りや店や人が写真では …