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働き方は自分で創る クリエイターのワークスタイル改革

広告会社・制作会社 45社に独自調査!ワークスタイル改善実践例

「働き方改革」が叫ばれる中、広告界で行われている取り組みについて、編集部では広告会社・制作会社45社にアンケートを実施。生産性や効率性を高めるための仕組み、様々な背景を持つ人が力を発揮するための制度など、実施中の「働き方」のアイデアについて答えてもらった。

調査概要

2017年2月、メールおよびWeb上でアンケート調査を実施。広告会社14社、制作会社28社、クリエイティブエージェンシー3社の計45社からの回答を得た。

Q. 昨年の10月以降で、新しく会社に導入した「働き方」の新制度はありますか。

Q. 御社で実施中の「ワークスタイル」の取り組み・アイデアについて教えてください。

    業務の効率化

    「パワポ(のプレゼン資料)作成禁止」:お客様へのご提案資料において、本当に必要な資料かどうかや資料の形を精査して不要なものを削減。「100本ノック禁止」:個人でのアイデア企画出しをやめ、「チームによるワークショップ型(独自フレームワーク)のアイデア出し」を実施。「アイデアは出せば出すほどよいものになる」という広告業界の惰性的な慣習から生まれる徹夜をなくす。2017年1月よりスタート。(スパイスボックス)

    時間

    「個々(またはチーム)のパフォーマンス向上・意欲促進、ライフワークバランス獲得などへの還元」を前提に、1週間の勤務時間のうち12%(約5時間)を業務外のことに充てられる「12%制度」を導入しています。(AID-DCC)

    ワーママ(女性)支援など

    ワーキンググマザーを支援する福利厚生を各種備えるほか、業務に2人体制であたるなど、チームでフレキシブルに業務分担ができるような仕組みづくりに取り組んでいます。(博報堂アイ・スタジオ)

    業務の効率化

    生産性向上のための「棚卸会議」を定期的に実施している。部署全員が抱えているすべての業務を洗い出し、捨てる業務、やめる業務、形を変える業務、などを部署ごとに決めている。積み上がった業務が圧縮され、無駄な業務が減った。定期開催することで、削減したところからまた無駄な業務が積み上がることも防止されていると実感。(サイバーエージェント)

    業務の効率化

    制作現場経験者による、制作現場サポートのための、プロダクションサービスユニット「TYPE」を2015年に創設。経験豊富かつ現場作業を愛するベテラン社員のネクストキャリア確保と、若手PMの負担、特に労務時間短縮を図っている。(太陽企画)

    テレワーク

    開発チームは毎週水曜日をリモートの日とし、家や他社のオフィスの一席を借りて作業している。(シフトブレイン)

    業務の効率化

    クラウド型の制作進行管理ツールを開発しています。映像、デザイン、デジタル業界でのクリエイター全員が対象のツールです。以前弊社のプロデュースチームが、2日徹夜でPPM資料をつくっているのを見て開発を思いつきました。2月からβ版を公開しており、5月には新サービスとして、業界全体に向けてローンチする予定です。(northshore)

    時間

    裁量労働制と、総労働時間の制限をセットで2015年から行っています。裁量労働の問題点として「実際には出社時間が指定されているような空気がある」「総労働時間が長くなりがち」という2点があります。逆にいうと、それをクリアすれば裁量労働制は、仕事の成果を出すことにフォーカスして裁量を持って働けるよい制度だという判断です。

    まず、裁量労働制について、再度社内で講習を行いました。仕事に支障がないように働くことを前提として、働き方の裁量があるのが裁量労働制だという大原則と、遅刻という概念はない(特定の時間に出社していないという理由による減給・罰則はない)という2点を伝えました。また、総労働時間の制限を行い、その時間を超えた場合は次の月に特別休暇をとってもらうようにしています。もちろん原則は総労働時間を毎月超えないことを目指しています。(カヤック)

    教育・研修

    英語支援として全スタッフ対象に年間7万円支給。英語の勉強に関することなら何でもOK(英会話レッスン、書籍、アプリなど)。海外進出を視野に入れ、スタッフの英語力の底上げのために導入。自発的に英語を勉強するスタッフが増え、開発チームではアメリカ人の先生を雇いオフィスでグループレッスンをしたりしている。結果、英語に抵抗のないスタッフが全体の半数近くまでになった。(シフトブレイン)

    ワーママ(女性)支援など

    かねてより出産前後の休暇のみでなく、育児に専念するために帰宅時間を早くできる「時短制度」を実施。また、近年では男性が育休として有給を取るケースも増えている。希望があれば、男女ともに育休の取得や子供のお迎えなどができるような働き方の改革、推進などを行っていくべきだと考えます。(アサツー ディ・ケイ)

    時間

    去年の年末に社員全員で「会社の事を考える会」という1日中会社のことを議論する会を行いました。勤務時間に関して/遅刻に関して/タクシー代に関して/定時以降の社内打ち合わせについて/経費についてなど上がってきた議題を総合的に見たところ、全ては勤務時間に繋がる、という結論に達しました。つまり遅刻も打ち合わせ時間もタクシー代などの経費なども、早く帰れれば全て問題が解決すると思ったのです。

    そこで、社員全員で議論を重ねて出した答えが「遅くとも22時には帰宅する」というものでした。基本出社時間が11時なのですが、今回決めた新たなルールは、「基本的には各個人に任せるがなるべくは11時に出社して、遅くても22時には帰る。22時に間に合いそうにない場合は朝早めに来て対応する。明日でもよい仕事は明日に回す」というシンプルなものです。結果、会社としては22時になると爆音で「ホタルの光」を流すという対策をしました。(BIRDMAN)

    雇用形態

    週5日出社以外の社員採用を2017年1月より実施。週2日出社でも、案件のサポートではなく、最前線で活躍してもらえるようにスケジュール側をコントロール。拘束時間がネックで採用できなかった優秀な人材を、「社員」として採用することができ、将来の働き方についての可能性を、前向きに考える機会も増えた。(ラナエクストラクティブ)

    テレワーク

    社員の声をもとに在宅勤務制度の採用を2015年から検討し、1年のテスト期間を経て2016年10月より正式に導入。1週間に1回、最大2日までの在宅勤務を認めている。入社3カ月を経過したアカウントサービス部門、ストラテジックプランニング部門、クリエイティブ部門の正社員が対象。働く母親をはじめ、対象者の4割以上が少なくとも1回この制度を活用した。(グレイワールドワイド)

    ワーママ(女性)支援など

    現場女性社員のための「ハッピーキャリアプロジェクト」を2016年中旬より検証中。結婚や出産後の復職先として、仮称「昼PM」という、キャリアを生かしつつできる時短勤務を試験運用している。また、社員がチャイルドマインダー資格を取ることを推奨、現在2名が資格取得のため受講中。属人的なプロデューサーやPMの業務のうち、分担できる業務をいかに切り出せるかの取り組み。(太陽企画)

    テレワーク

    小1の壁を取り払う目的で策定した在宅併用勤務制度があり、男性でも女性でも小学生の子を持つ社員は、申請すると家にPC等会社と同様の環境を設置し、自宅で仕事をすることができる。(広告会社)

    休暇

    年に2回、5日連続(土日を入れると7日間)で休暇を取得できるようにスタッフ間の調整をするため、計画休暇の予定提出を義務化し、また上長は業務に支障をきたさないように調整を行っています。(オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン)

    テレワーク

    育児・介護などの必要性に迫られているメンバーを中心に在宅勤務制度を実施した結果、新しいワークスタイルとして確立。その結果を受け、今後は大幅に対応範囲を拡大していく予定。(デジタルマーケティング会社)

    副業

    事前申請をすれば副業OK制度を2015年7月より実施。「経験を積みたいというポジティブな気持ちで、いいことをしているのであれば、コソコソする必要はない」という会社からのメッセージ。堂々と副業の成果を社内で発表できる空気が生まれ、メンバーの人脈が広がり、会社としても新規案件受注のチャンスにつながった。(ラナエクストラクティブ)

Close Up!
サイバーエージェントの社内制度

    妊活休暇は平均月12件利用され、妊活コンシェルと合わせて、これによって妊娠が叶ったという例も。また、キッズデイ休暇は男性社員の利用が7割です。(サイバーエージェント)

Q. 広告界の「働き方」について感じる課題や、こう変わってほしいと思うことを教えてください。

    「働きやすさより働きがい」が本当に大切だと痛感しています。誤解を恐れずに言うと、長時間労働が悪いのではなく、どんなに恵まれた環境で働いていても仕事と人材の適材適所のマッチングがうまくいかなければ非効率な働き方になります。社員の働きがいを引き出せるように、これからも働き方を研究していきたいと思います。(DODO DESIGN 堂々穣)

    就業時間について特に社会的な注目を浴びていますが、クリエイティブは裁量です。時間に左右されるような環境はクリエイティブでないと思っています。むしろタイムマネジメントをひとりひとり、そして会社が共有、連携、運営できれば時間はきちんとコントロールできると考えています。

    もうひとつ言えるのは、クリエイティブというものをあまり知らないでチームの一員になられている方がいます。そういった人にも、丁寧にクリエイティブの環境やモチベーションの構築がどんなものかを理解していただき、一緒にクリエイティブという場作りを促しています。(canaria)

    最近の報道により極端な部分に注目されがちですが、広告業界はユニークなタレントが集まり非常に魅力的な業界のひとつです。真摯に業界が抱える問題に取り組みながらも、若者にとっての憧れの職業と思える情報を積極的に発信していくことが重要だと思います。(オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン)

    予算もスケジュールも以前より限りがある今、事前にここまではできる、これ以上は追加で、さらに土日や年末年始、そして残業が必要になるような仕事を請ける場合は、追加コストがかかるということをクライアントに伝えていくべきではないだろうか。(キラメキ 石井義樹)

    時間=成果の古い感覚の意識改革。社員1人1人の意識が変わらなければ改革につながらない。仕事をやりたい社員と帰したい会社側の思いのズレや、社員1人1人の能力の問題があり、強制帰社では社員のモチベーションが落ちる一方。働き方改革の中身を探っている状況です。(映像制作会社)

    社内でのさまざまな取り組みは可能であり、実施はするが、クライアントの協力なくして「働き方改革」は不可能。また個別の広告会社での取り組みにも限度があり、広告業界全体での制度(自主規制)として、横並びで「xxxxを実施」、「yyyyはNG」などの規制を導入することも有効と考える。(マッキャン・ワールドグループホールディングス)

    No Pain No Gain.はすべてのプロフェッショナルワーカーに当てはまる言葉だと思うが、そのPainもGainが得られる希望があってこそ耐えられるもの。何を目指し、どうなりたいのか、自らを律して仕事にあたる人が増えることで、この業界の閉塞性が打破できると信じている。(ワン・トゥー・テン・デザイン 小川丈人)

    先入観の無い自由なアイデアが求められる業界であるにもかかわらず、こういう働き方をする者はきっとこうだろう、という先入観が、まだまだ業界内にやんわりと漂っている雰囲気を時々感じます。企業に求められている本質を経営者側も社員側も理解することで、「課題をクリアしながら満足度を上げる」アイデアはきっと見つかるはず。(ラナエクストラクティブ 太田伸志)

    電通の過労死の事件をきっかけに日本の広告業界の働き方が本当に変わってほしいと思っています。皆これを期に乗っかるべきだと思います。クリエイティブな仕事をやっていると時間が許す限りそれを詰めていきたい、という気持ちももちろんわかりますし、好きだからやっているのに時間のことをとやかく言われたくない、というのもわかります。

    しかし実はその考え自体が日本のクリエイティブの質を下げている気がします。端的に言うと、寝ないで働くといいものができるどころか逆にクオリティは下がるし、余計に時間がかかります。時間を使えばいいクリエイティブができるわけじゃないし、だからこそ日本のクリエイティブの人件費は海外に比べてバカみたいに安いんです(当たり前ですよね、時間外にタダで仕事してるんですから)。

    これらの問題は僕らクリエイティブだけが頑張ってもダメで、クライアントも含めてこの問題を解決していかないとならないと思っています。僕らクリエイティブの会社は、スピード重視で選ばれるような会社ではなく、ちゃんと自信を持ってクリエイティブのクオリティを評価されて選ばれる会社を目指さないと未来はない気がします。(BIRDMAN 築地Roy良)

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