NPOにとって「コミュニケーション」は理解者や協力者を増やし、活動を広げていくための重要なテーマ。電通ではNPOとタッグを組み、広告で培った「伝えるコツ」をNPOの現場に提供する支援活動を10年以上続けている。
NPOは広報やコミュニケーションで困っている
NPOのコミュニケーション力向上を目的に電通社員が編集・制作した「伝えるコツ」は、伝え方の基本やプレゼンテーションの方法、SNSの活用法など19のコツが盛り込まれたテキストだ。A4判・64ページの書き込みノート式で、構成は
(1)考え方篇(コンセプトやターゲット設定について)
(2)実践篇(デザインや表現手法について)
(3)発展篇(SNS発信やリリース制作について)
(4)協力篇(プレゼン、ファンドレイジング法について)
の4つのパートからなる。実際にめくってみるとわかるが、NPO以外のコミュニケーションでも役立つ、メッセージ開発のための考え方の本質や、制作のノウハウが詰まっているテキストである。学んだことを書き込みながら、自分だけの『伝え方のワークブック』を完成させられる体裁になっている。
この「伝えるコツ」の初版が発行されたのは2004年。2010年の第2版を経て、2015年11月には改訂第3版が発行された。企画のきっかけのひとつに、2002年頃に難民を助けるNGOの広告制作に携わった体験があったと元電通執行役員の白土謙二さんは話す。寄付募金のための新聞広告を頼まれて作ったが、できた広告はスミベタに白抜き文字で、どこか怖い雰囲気。その結果、募金は集まらず、広告出稿は赤字になってしまった。白土さんはNGOの理事長の元へ謝罪に訪れた。「どんな人がどんな気持ちで寄付をするのかわからないまま広告をつくってしまい、申し訳ないと謝りました。ところが、逆に活動紹介と募金の2つの目的を1つの広告に入れた私たちが悪いと謝られたんです」。その時、いつかNPOの人たちに恩返しをしようと心に決めた。
それから数年が経ち、阪神・淡路大震災が発生。企業活動として、何か被災地の役に立ちたいと経団連に相談に行くと、「NPOはどこも広報やコミュニケーションで困っている。電通のノウハウを彼らに教えてほしい」とアドバイスを受けた。それを機に結成されたのが、NPOと電通のメンバーがフラットな立場で集まる組織「NPO広報力向上委員会」である。「電通はコミュニケーションが専門領域。多くの団体が困っているなら、みんなを集めて勉強会をしたら喜ばれるんじゃないかと話し合ってつくりました。当時はCSRが話題になっていて、電通が本業を生かした社会貢献のアイデアを求めていた時期とも重なりました」(白土さん)。具体的な活動として、テキストをつくることになったが、「それだけでは身につかない」という声が上がったことから、テキストとセミナーをセットにし、電通社員がセミナー講師を務める形で全国を回ることになった。
NPOからアドバイスを受け、1年間かけて制作したテキストは …