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『重版未定』川崎昌平さんが選んだ4冊の本

川崎昌平

クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。第95回目は、『重版未定』が話題の、作家・編集者の川崎昌平さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』

大江健三郎(著)
(新潮社)

ぼんやりと「文章を書きたい」などと考えていた高校時代、大江健三郎と出会った私は(最初に読んだのは『性的人間』だったと思う)手当たり次第に著作を読み、読み耽り、読み返し……中でも「こりゃあまいった。俺には文章を書くなんて到底ムリだ」と嘆息せしめたのがこの作品。体としては短編集なのだろうが、一個のまとまった苛烈な表現として読める本作は、未熟な私に「一語一句に血潮を通わせる覚悟」の凄まじさを鮮烈に示してくれた。「ここまですべてを賭して書く能力は俺にはない。かなわないな。さすがだ」などという不遜極まる一文が当時の日記に見える。

だが、ある意味ではその時点での諦観が私を文章の道へと …

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