編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
橘川幸夫『ロッキング・オンの時代』
(晶文社)
- AD/佐藤直樹
- D/遠藤幸
1972年から続く『ロッキング・オン』創刊時のノンフィクションは、ピンクに近い赤とブルーの鮮やかなカバーが目を引く。デザインを手がけた佐藤直樹さんは「私自身は『ロッキング・オン』と非常に馴染んできた世代ですが、そこで完結させてしまったら本としては駄目だろうなと、まず思いました」と話す。
タイトルは当時の書体を使うなどいくつか検討する中で、レタリングが選ばれた。佐藤さんのディレクションのもと、遠藤幸さんが鉛筆で描いた文字を版下として入稿している。「コントロールしきれているのかいないのかわからないギリギリのところを狙ったつもりです。そのぼんやりした地点に向けて内部で投げ合って最終的に落ちたのがここという感じです。レタリングと色と書体がキモになることは最初からわかっていましたが、問題はその先なので」。色はロックをイメージさせる青と赤を基調に、王道から少しはずして現代に合うように調整。本の編集もさることながら、このカラーリングも店頭での『モノ』としての存在感を高め、売れ行きも好調だ。
CD
テンテンコ『工業製品』
(トイズファクトリー)
- AD/長尾謙一郎
- 撮影/白井晴幸
アイドルグループbisを経て、独自の活動を続けてきたテンテンコさんのアルバム「工業製品」は、CDジャケットにCDの盤面がプリントされている。デザインを手がけたのは、漫画家として知られる長尾謙一郎さんだ。このアルバムはテンテンコさんと話し合い、コンセプトから考えたという。
「ビジュアルをつくるときはいつも表に出さないけれど、自分なりにストーリーを考えます。今回は芸術が単なる『製品』に成り下がった哀しさに端を発したストーリー。CDだけではなく、作品もアーティストも、ジャケットにある水道管もみんな『製品』の一部。本来、表現物はもっと自由に存在すべきものなのに製品と化している……そんな哀しみや皮肉のようなものを、このビジュアルに込めました」。
かつてCDが世の中に登場したときの神秘的なイメージと三種の神器である鏡を重ね合わせ ...