18歳選挙権施行のタイミングに合わせて、2016年5月に東京都が公開したプロモーション動画「TOHYO都」。これまでの「選挙PR」とは一線を画すプロモーションの背景にあったプレゼンとは。
今までの選挙PRキャンペーンを疑うことから考える
高校生に人気のタレント「りゅうちぇる」「ぺこ」が、都非公認キャラクター「東京都くん」の案内を受け、たどりついたのは架空の都市「TOHYO都」。圧倒的なテンションで進む破天荒なストーリーとビジュアル、リフレインする「18歳から選挙権」のフレーズ…。「本当に東京都公式なのか?」「強烈すぎる」などと驚きの声が相次いだこの動画、東京都選挙管理委員会事務局によるれっきとした「18歳選挙権」のプロモーション公式動画である。
東京都によるオリエンの内容は、「新有権者を中心に18歳選挙権を話題化することで、選挙への関心を高める」こと。順当に考えれば、若者に人気の18歳のタレントを起用し「選挙に行こう」と呼びかける施策になるはずだ。「でも、それってどれだけ効果があるんだっけ?というのがこの企画の出発点でした。実際、これまでもそういうコミュニケーションをしてきて、目立った成果に結びついていない。違う考え方で若者を動かさなければいけないのではないかという前提で臨みました」と、このキャンペーンを担当した東急エージェンシープランナー酒井亮祐さんは話す。
酒井さんはまず、大学生と専門学校生を集めてグループインタビューを行った。すると、半数以上の学生が「選挙には積極的に行きたいとは思わない」と言い、その理由として「誰に入れていいのかわからない」「わからないのに変な人に入れてしまうのは怖い」という声が聞かれた。こうした声を受けて、「そもそも『投票に行く前に、政治を理解しないといけない』という前提を疑ってみてはどうか?」と酒井さんは考えはじめた。
若者にとって、選挙はお堅いイメージがあり、周りには他の『楽しいこと』があふれているために、意識は向きづらい。しかし、政治を理解していなくても「まずは投票に行ってみる」という行動を喚起できたら?「デートのついでに投票に行く」というように日常の行動の中に組み込めたら?「実は投票という行動を先につくることで、『自分が投票した人はどうなったんだろう』など、後から関心が生まれるのではないか。理解→行動というこれまでフローではないアプローチをしましょう、というのが今回の提案です」と酒井さんは話す。東京都の担当者も従来のアプローチに限界を感じており …