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話題の広告キャンペーンの企画書を大公開

CMから生まれたWeb企画 時機を逃さず広がりを生んだ

ポカリスエット 2016キャンペーン 大塚製薬

高校生たちがキレのいいダンスを披露するテレビCMから、Web上のダンス動画投稿コンテストまで一貫した企画を通年で展開し、大きな人気を博したポカリスエットのキャンペーン。その企画はどのように提案されたのか、電通 アートディレクターの正親篤さんとデジタル施策を担当した眞鍋亮平さんに聞いた。



テレビCM「エール」篇



テレビCM「サンクス」篇

CM企画のプレゼンから始まった

高校の廊下に一列に並んだ女子マネージャー。「♪キミは負けず嫌いなマイボーイ夢を叶えて」と歌い出し、キレのいいダンスを踊りながら廊下を行進していく。部活動に打ち込む男子生徒たちのカットが次々とインサートされ、マネージャーたちは屋上へ。ホースから放水される大量の水が降り注ぐ中、踊り続ける。「♪本気を出して奇跡起こしてみようよ」と曲は続き、「潜在能力をひき出せ。」「自分は、きっと想像以上だ」というコピーで締めくくられる。

これは、2016年春に放映されたポカリスエットのCM「エール」篇。夏には、「エール」篇と対になる「サンクス」篇が公開され、部活に情熱を注ぐ男子高校生たちを主役に、マネージャーたちへの感謝をダンスと歌で伝える様子が描かれた。いずれのCMも、楽曲、ダンス、キャスティングなど、あらゆる面で反響を呼んだ。

そして、さらなる展開として企画されたのが「ポカリガチダンス選手権」である。テレビCMで話題となったダンスを踊って動画を応募してもらうコンテスト企画をネット上で開催し、その入賞ダンスをまたテレビCMとして放映したのだ。その他にも、CMに出演した高校生ダンサーがパリやキューバで踊るWeb動画や、写真のSNS投稿キャンペーンなど複数の施策がマス・デジタルを連動させながら走っている。だがこの構造、当初から入念に計画されたものかと思えば意外にそうではなかったという。

電通チームが最初に行ったプレゼンは、あくまで春夏のCM展開に関するもの。前年の2015年からポカリスエットを担当している電通のアートディレクター正親篤さんは、次のように話す。「これまでとは違うブランドキャンペーンを、というお話でした。当時展開されているポカリスエットの広告は、水分補給のエビデンスをきちっと説明する、という方向性で展開されていたのですが、その結果“風邪のときに飲むドリンク”的なポジションに寄ってしまっていた。そこで、普段からコンディションを整え、自分が持っている力を出すために飲むドリンク、というポジションに置き直して、さらに無条件に好きだから飲む、というところまで持っていきましょうと始まったのが、2015年の展開です」。

そのために、ポカリスエットの歴代CMの伝統とも言える新人清純派女優が出演する路線に戻し、若返りも同時に図った。「企画書に書いたのは『女性ヒロイン=ポカリスエット王道の世界観の踏襲』です。それを今の時代に合った方法と態度で実現する。2015年のキャスティングは女優の中条あやみさん。CMが実際に放映されて気づいたのは、やはりこの路線は視聴者に好まれるということ。ブランドに蓄積された資産があることを実感しました」。伝統の新人女優路線が効果をあげたことで2016年も同路線の継続が決まり、新ヒロインはオーディションの末、14歳(当時)の新人女優・八木莉可子さんが選ばれた。

さらに、前年からのシリーズ性をもたせるため、「全力で頑張る人をポカリスエットは応援する」というメッセージが込もったコピー「自分は、きっと想像以上だ。」「潜在能力をひき出せ。」を引き継ぐことも企画書に盛り込んだ。

企画書に描かれた2016春夏CMの企画コンテを見ると、「女子マネージャー」を主人公にしたミュージカル仕立てのものになっている。春篇はマネージャーから部員へ、その返礼として夏篇は部員からマネージャーへ、という2本のCMを対で制作することで立体感を持たせることは当初から計画されていた。「ここから現状のCM表現に変わったのは、監督の井口弘一さんの判断によるところが大きいです。企画コンテを見て、日本人が海外の真似をしてミュージカルをしても絶対に寒いものになってダメだから、逆に恥ずかしいぐらい熱いものにしましょうと言ってくれて。さらに演出では、日本の高校生独自の熱量を表現するには、コンテンポラリーダンスのほうがいいと提案してくれました。日本の高校生独自の熱量みたいなものを、監督が見つけだしてくれたと思います」。

振付を依頼したのは、パリを拠点に活動しているフランス人デュオ「I Could Never Be A Dancer」。「ネットで彼らのパフォーマンスを見たところ、動きが面白いし、日本人にも踊れそうだと思いました。個人技ではなく、みんなで動きを揃えることもできるので、独自のものが生まれる予感もありました」。音楽は、一般的にはあまりない“作曲家競合”で提案された曲のそれぞれよいパーツをつなぎ合わせてつくられた。編曲はフランスのエレクトロ系ミュージシャンYUKSEKが担当し、歌詞はたたき台に井口監督が手を入れたものを作詞家が仕上げるリレー方式で作られている。「いいものをつくることを最上位に置いた結果だと思います。完成した曲は、エレクトロの編曲によって、ベタな歌詞の“ダサさ”がなくなっていて、さすがだと思いました。エレクトロで高校生と聞いたときは、全く仕上がりが想像つかなかったのですが、それを成立させている。そこは監督のセンスと言うほかありません」。

春・夏テレビCMの企画書-1

春・夏テレビCMの企画書-2

春・夏テレビCMの企画書-3

井口弘一監督による演出コンテ

春・夏テレビCMの企画書。前年のメッセージを踏襲すること、具体的なCM案などが記載されている。企画コンテでは、CMはまだミュージカル風。なお、D案は「NYに踊りに行く」案で、後に「パリで」篇に発案した。右下は井口弘一監督による演出コンテ。ミュージカルから、コンテンポラリーダンスの企画へと変更されている。

SNS企画「ポカ写」キャンペーンをCMと並走させる

「ポカ写」ポスター

2016春夏のCM案が決定した頃 …

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