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デザインプロジェクトの現在

いい空気が流れている空間デザイン

川島蓉子

このところ、長坂常さんの仕事が気になっていた。「ブルーボトルコーヒー」における一連の空間デザインはじめ、手がける店の顔つきがはっきりしていて、過ごした時間が印象に残る。それはなぜなのかを知りたくて、話を聞きに行った。

『フラットな関係』を空間で表現する

本社機能も兼ねたブルーボトルコーヒー中目黒店。
photo Takumi Ota

長坂さん率いるスキーマ建築計画は、表参道の青山通りに面した一等地のビルの3階。古い建物なので、空気の流れがゆったり、少し重みを持っているのが心地よい。年月を経た扉を開けると、事務所の人たちが立ち働いている様子に切り替わる。生き生き動いているのに穏やか──その雰囲気はビルの有り様と符号している。

事務所の一画にある長坂さん作の真紅のテーブルをはさんで、あれこれ話をうかがった。まずは、5店舗目になる中目黒の「ブルーボトルコーヒー」。長坂さんにとってここは、前のオフィスの向かいという立地。もとは電気機械の工場で、天井高があって佇まいに存在感がある。通り越しに眺めながら気になる存在だった。まさにその地を「本社機能を備えた店」にするためリノベーションしてほしいとブルーボトルコーヒーから依頼され、驚いたという。

空間を作るにあたって心がけたのは『フラットな関係』と『いつでも動ける』ということ。いずれもブルーボトルコーヒーの企業姿勢に通ずるもの。それは具体的にどういうことを意味するのか──まず『フラットな関係』とは、コーヒーを作っている人、提供する人、お客の三者それぞれが、価値に対して対価を払うという意味で、対等な関わりにあるということ。「『フラットな関係』を、空間という立体でどう表現するかに一工夫が必要だった」(長坂さん)。

お客としてブルーボトルコーヒーを訪れると、オープンでありながら落ち着けるのは、カウンター内外の段差がないことや、テーブルがシンプルな直方体であることなど、『フラットな関係』を意識した空間に拠るところが大きいと腑に落ちた。また、中目黒店は、ショップ兼オフィス、バリスタのトレーニングルームと、ワークショップのできるフリースペースからなる複合的な空間。

「周辺に個性的な商店が並んでいる。そのスケール感を保ちつつ『フラットな関係』を築くため、荷揚げ用に床に開いていた穴などを利用して、スキップフロアを細かく分けた」。何気ない共有感は、そんな工夫から生まれている。

環境を受け容れていくデザイン

自由が丘のインテリアショップ「TODAY’S SPECIAL」
photo Takumi Ota

もうひとつの要素は『いつでも動けること』。ブルーボトルコーヒーは、扉や仕切りがない開放的な空間で、テーブルや椅子が高めで、「腰を据えた行為」より「活動的な行為」が似合う空間だ。中目黒店は建物が3層になっているのだが ...

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