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デザイン会社進化論

常に人と情報が出入りするオープンなプラットフォーム「SANDWICH」

名和晃平

単なる作家の創作アトリエでもない。かといって一般的な造形スタジオでもない。アーティストの名和晃平さんが京都に生み出した唯一無二の「クリエイティブ・プラットフォーム」、それがSANDWICHだ。ここでは日々どのようなクリエイションが行われているのか、室井淳司さんが話を聞いた。

Photo:parade inc./amanagroup for BRAIN

サンドイッチ工場をリノベーション「SANDWICH」が生まれるまで

室井 僕はSANDWICHと名和さんの関係性に興味があって、今日はそのお話を聞きたいと思っています。SANDWICHを名和さんはアトリエではなく、「クリエイティブ・プラットフォーム」だとおっしゃっていますよね。まずはその立ち上げの経緯から聞かせていただけますか。

名和 7年前までは別の場所にいわゆる『アトリエ』を構えていたのですが、愛知万博や六本木クロッシングなどで大型の作品をつくるようになって手狭になり、アトリエと倉庫を備えた広い場所を探していたんです。そのときに京都伏見にサンドイッチ工場跡が見つかって。行ってみるとすごくいい場所だったんです。気がいいというか。想定していたよりもだいぶ広かったので、ここでさまざまなジャンルのクリエイターと創作活動をすると面白いんじゃないか?とイメージがわきました。そこから知り合いの建築家や学生たちと空間の使い方やリノベーションの進め方をディスカッションし始め、それがそのままSANDWICHというプラットフォームになりました。

室井 建築家など他のクリエイターと共同できる場所がプラットフォームなんですね。

名和 そうです。僕は京都造形芸術大学で教えているので、学生たちと一緒に壁や天井を壊して、新しい壁を作ったりして、リノベーションを進めました。その過程で建物の構造や資材の扱い方を知ることにもなりましたし、ソフトを優先してハードが立ち上がる面白さを発見したことで、「建築や空間の設計もしてみたい」と、より興味を持つようになったんです。自身の作品にも、影響があったと思います。

室井 アーティストって、一人で黙々と制作するイメージがあるんですが、名和さんは、元々誰かとオープンに連携しながら、自身の作品の幅を広げていきたいと考えていたんですか?

名和 僕は大学の博士課程まで進んだので学生時代が長いんです。その間、黙々と制作する時期も経験してきました。でも当時から、そういう自己表現、自己格闘がアートだ、という考え方に疑問を抱いてきたんです。個人的な体験やトラウマを表現することって、今の時代に別にさほど求められていないんじゃないかと。近代美術はその傾向で100年近く続いてきたのだから、その結果である作品はもう十分に美術館で見ることができます。次の100年も同じ方法論で作品を生み出す必要はないんじゃないか。それよりも、社会と自分を接続して、この世界で何かが起こるような環境や仕組み、作品をつくるほうが新しいし、大事だと思うようになりました。

室井 そう考えていたタイミングで、このサンドイッチ工場跡に出会ったんですね。名和さん個人の活動とSANDWICHでの活動はどう区別していますか?

名和 基本的には1人のアーティストとして、日々制作し、国内外の展覧会やパブリックアートなどで、作品を発表し続けています。SANDWICHでは、実際は代表という立場で経営も総合的なディレクションも行っていますが、僕はもともと会社員になりたくなくてアーティストになった人間です。今も自由人でありたいので、SANDWICHというプラットフォームにおいても …

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