電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーでは、さまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックカバーを提案していく。
架空の本『Pryke』のブックジャケット
「ブックジャケットは本を読んでいる間、ずっと触っているもの。だからその手触りは、読み手に無意識のうちに影響を与えるはず。触感もやがて物語の一部を構成する大事な要素になるんじゃないかと思うんです」とSIXのアートディレクター矢後直規さんは話す。
今回テーマになった「プライク」は、しっとりと濡れたような肌合いが特徴のファインペーパー。矢後さんは、「質感が本の物語と一体化していく感じ」を表現するために、あえて本の表紙を思わせるデザインのブックジャケットを制作した。
「この表紙に書かれている文言は、一見本の内容のようですが、実は紙の質感を表していて、背には紙の厚さ、裏表紙には色のバリエーションが記載されています。まるでその本の表紙かのようなブックジャケットをつけることで、紙の質感と本の内容が混ぜこぜになっていく…そんなイメージでつくりました。プライクの正式なスペルは『Plike』ですが、架空の本のブックジャケットという設定なので、あえて『Pryke』という架空のタイトルにしています」。
そして、紙の情報が文言として盛り込まれていることで、このブックジャケットは紙見本としても機能するようになっているのもポイントだ。「この紙やセレクトした色の印象に近いものを考えて、書体はモダン・ローマン体のDidot(ディド)をセレクトしました。アンダーラインを引いてある部分は、紙見本として強調したい部分です。僕、このシステムは他のファインペーパーでも展開できると思っていて、竹尾さんに新しい紙見本シリーズとしてぜひ提案したいです(笑)」。
「『Pryke』って何?と思ってほしいので、ぜひおもむろに人前で読んでほしい」とも。シックな見た目の裏側に、矢後さんのいたずら心が隠れたブックジャケットになった。
INFORMATION
2016年11月30日(水)まで、東京・代官山蔦屋書店2号店1F建築・デザインフロアの<BOOKBOX>コーナーに、本企画に連動した矢後さんの展示コーナーが設けられています。本ブックジャケットのカラーバリエーションもご用意しております。ぜひお越しください。
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2016/11/book-box-2.html