4年目を迎えた「ものづくり産地の祭典」の新展開
今年の10月に4年目を迎える、新潟県 三条市のイベント「燕三条 工場の祭典」。今年は金属加工の「工場」に加えて、農業の「耕場」が加わりパワーアップしている。全体監修を行うmethod 山田遊さんとアートディレクションを担当した一人、SPREADの小林弘和さんに話を聞いた。
地域の可能性を引き出すクリエイティブ
昨年9月、高知県 佐川町のクリエイティブディレクターに就任したissue+design(博報堂)の筧裕介さん。人口1 万人3千人の町にデジタルファブリケーションの工房を開設し、作り手を育成するプログラムを実施するなど、新しい取り組みを次々と進めている。
「総合計画を住民と一緒につくりたい」。そう言って、佐川町の堀見和道町長がissue+ designの筧裕介さんの元を訪れたのは2013 年末のこと。それから2 年あまりが経ち、2016年4月、佐川町の総合計画『みんなでつくる総合計画』が完成した。
この総合政策には、25の佐川の未来像が提示されている。「まちまるごと植物園」「みんなの寺子屋」「さかわ戦隊キコリンジャー」など。佐川町で全18回のワークショップを行い、そこから457のアクションを考案、それを25の未来像に落とし込んだものだ。
佐川町は「自伐型林業」の創出を、向こう10年のテーマに掲げている。自伐型林業とは、個人が自分で保有する山林に入って間伐材を切り出して売る“ 小さな林業”だ。大規模伐採型の林業に比べ、低コストで持続可能、環境への負担も少ない。そこにデジタルファブリケーションを使ったものづくり革命を掛け合わせ、先進的プロダクトを開発する。大量生産品と個人のDIYの間にある、中小規模の生産者を多数を生むことで新しい産業を創出しようとするチャレンジである。
今年5月にオープンした「さかわ発明ラボ」はその拠点となる場所だ。レーザーカッターやデジタルミシンなど、多様なデジタルファブリケーション機器と、その扱いに精通したスタッフが在籍している。「デザインとデジタルは地方創生の中心だと僕は考えています。自伐型林業で伐採される、細かい多様な木材は、デジタルファブリケーションと組み合わせることで商品価値を高められると考えているんです」と筧さんはその狙いを話す。
この発明ラボを最大限活用してもらうため、町民や子どもたちを対象にしたワークショップも行っている。例えば町民向けの「公園ベンチづくりワークショップ」。町民憩いの場・牧野公園にどんなベンチがあったらいいかを考え、プロトタイプを制作し、それを3Dデータに変換して切削機械で切り出し組み立てるところまで、一通りの流れを経験する。
佐川町立小学校の6 年生を対象にしたワークショップ「ロボット動物園」は全10回。次世代の佐川を支える子どもたちが新しいものづくりやデザイン、プログラミングに親しみ熱中するきっかけになるようにと企画された。こうした作り手を育てる取り組みを同時に進めることによって、「町の中にクリエイターを増やしていきたい」と筧さんは言う。
さらに、外部からさかわ発明ラボに勤務する「発明職」スタッフを昨年に引き続いて公募。今年はアーティスト、デザイナー、エンジニアなどから応募があり …