「がんばる母さんやめました」自分らしさを探る「卒母」の考え方
『卒母のためにやってみた50のこと』(大和書房)という本に出会い、ページを繰り出したら止まらない。手書きの文字とイラストで構成されているたたずまいもユニーク――著者でありグラフィックデザイナーの田中千絵さんに話を聞いた。
デザインプロジェクトの現在
中原慎一郎さんの仕事が気になっていた。新宿「ニュウマン」のエキソトにある「TORAYA CAFÉ・ANSTAND」と、青山「スパイラル」の5階にできた「call」は、とても魅力的な空間――久しぶりに話を聞きにいった。
今年、新宿・NEWoManにオープンした「TORAYA CAFÉ・AN STAND」。
表参道・スパイラル5階にオープンした「call」。
新宿駅新南口のエキソトに、和菓子の老舗であるとらやがつくった新業態「TORAYACAFÉ・AN STAND(以下、あんスタンド)」がある。広々とした通路に面した店は、全面ガラス貼りのすっきりした空間。これだけ削ぎ落した造りで、外からよく見えるので、お客の気持ちが「入りづらい」、「食べづらい」に向かっても不思議ではない。が、素っ気ないほどのシンプルさが清潔感と軽やかさを生み出し、白木のカウンターやテーブル席が「おいしそう」と好奇心をくすぐり、つい入ってみたくなる。
依頼されたのは、「TORAYA CAFÉ」で販売している「あんペースト」を主役に据えた新しい店の空間だった。中原さんは、“あん”を取り巻く風景から発想を練っていったという。生まれ故郷である鹿児島の和菓子から、「“ あん”を包むようにおおらかで柔らかい皮」をイメージした。和菓子に欠かせないものであり、とらやと強い結びつきがある“あん”を取り巻くイメージを、空間で表現することを意図したのだ。
「あんスタンド」の核をなしている“あん”を柔らかく包み込むようなショップ空間――店の奥の壁面は、白木の縦格子になっているのだが、その背面にガラス板を一枚、嵌め込んである。光を受けたさりげない艶感が、白木の柔らかい質感と共鳴し、心地良い空気が流れている。
一方、店の側壁を彩る虎の絵は、タイルでかたち作られていて、艶のある質感が …