「なんでだろう」から始まるグラフィックデザイン
私の母はイギリス人、父はスリランカ人で、名古屋にあった当時の実家は、さまざまな文化が入り交じった資料館のような空間でした。母は英字新聞社の美術記者として働いていて、私の部屋は母の書斎も兼ねていました。
デザインの見方
大学3年生の頃に毎日デザイン賞に応募するため、新聞広告をつくる授業がありました。当時の僕は世の中のシステムにイライラしていて、その怒りや恨みをぶつけるように、タイポグラフィだけで社会問題を訴えかける広告をつくったんです。見るからにネガティブで、ドロドロした作品でしたが、それがなぜか毎日広告デザイン賞の奨励賞をいただきました。
授賞式では他の受賞作品もスクリーンに映し出されていて、そこで葛西薫さんが手がけたサントリーウーロン茶の広告を初めて目にしました。なんて人を清々しい気持ちにさせる広告だろう――。それを見た瞬間、自分の作品が恥ずかしくなったことを覚えています。生々しい部分を見せなくても情感に訴えることができる、見るだけでいろいろなことを想像させることができる、それがデザインの力なんだと初めて知ったのです。「16のときの本」というコピーも素晴らしくて …