アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
大学3年生の頃に毎日デザイン賞に応募するため、新聞広告をつくる授業がありました。当時の僕は世の中のシステムにイライラしていて、その怒りや恨みをぶつけるように、タイポグラフィだけで社会問題を訴えかける広告をつくったんです。見るからにネガティブで、ドロドロした作品でしたが、それがなぜか毎日広告デザイン賞の奨励賞をいただきました。
授賞式では他の受賞作品もスクリーンに映し出されていて、そこで葛西薫さんが手がけたサントリーウーロン茶の広告を初めて目にしました。なんて人を清々しい気持ちにさせる広告だろう――。それを見た瞬間、自分の作品が恥ずかしくなったことを覚えています。生々しい部分を見せなくても情感に訴えることができる、見るだけでいろいろなことを想像させることができる、それがデザインの力なんだと初めて知ったのです。「16のときの本」というコピーも素晴らしくて …