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デザインプロジェクトの現在

ストーリーを添えたギフトを贈る「みらいの夏ギフト」

川島蓉子

伊勢丹とifs未来研究所がコラボした「みらいの夏ギフト」が8月3日から9日まで、伊勢丹新宿店で開催された。3回目ということで、今年は全館各所で行うことに――見どころをまとめた。

「みらいの夏ギフト」カタログ。アートディレクションは10inc.の柿木原政広さん、西川友美さん。コピーライターは国井美果さん。

羊羹の“みらいの食べ方”を提案する

日本古来のギフトである「お中元」は、もともと魅力的な意味を持っていたはず。これに新しい息吹を与えることはできないかと、「みらいの夏ギフト」プロジェクトが始まった。3年目として掲げたテーマは「さまざまな分野のプロが選んだ、ストーリーを添えたギフト」。「売り場を巡りながら、選びながら、未来に向けてワクワクしてくる気持ちを、大切なあの人に贈りたくなる」を意図した。従来は1階中央の「ザ・ステージ」という場で行っていたものを、今年は全館の各フロアのイベントスペースはじめ、売り場の随所で展開することになり、規模も商品バリエーションも広がった。特に推薦したいのは、以下の2つのコーナーだ。

ひとつは、4階「みらいの羊羹」。「どんな羊羹があったら、和菓子をいただく時間がもっと楽しくなるのか、そして、大切な人に贈りたくなるか」という課題について、とらやと未来研が組んで羊羹を開発した。

チームに加わったのは、デザイナーの松村光さん。「正直、羊羹はあまり得意ではなかった」からこそ、“自分が食べたくなる”視点から「みらいの羊羹」を考えたという。結果的に行き着いたのは、“みらいのかたちや色”でなく、“みらいの食べ方”だった。

羊羹と言えば、少し厚めに切ってお皿にのせ、黒文字楊枝を添えて食べるのが一般的だが、もっとカジュアルに、リラックスして食べる方法はないかと考え、「生ハムのように薄い羊羹」を思いついた。薄い薄い羊羹を、パンにのせたりチーズと巻いたりして食べたらどうなるか?実験的にやったところ、「おいしい」と感じたので提案した。

厚く切ることが良しとされていた羊羹について、この提案が受け容れられるかどうかは不安だったとか。一方でとらやは、和菓子の食べやすさについて、過去からずっと考え続けてきた企業。「従来のものを守らねば」という姿勢でなく、お客様の視点に立って考え抜くことを大切にしてきた。

薄い羊羹についても、チームメンバーである最高技術者の染谷武徳さんと、商品開発主任の小野葉月さんは、まず試してみたという。「厚みが変わることで、同じ羊羹でも、フワッとした舌ざわりや、少し甘味が薄い味わいに変わる」と大きな発見があったことから、極薄の羊羹づくりに挑戦した。こうして、格式や伝統に縛られることなく、時代に即したしなやかな姿勢を崩さずにきたからこそ、約五百年もの歴史が築かれてきたのだと頷かされる出来事だった。

さまざまな方法を試した結果、2mm強の薄い羊羹「NATSU NO TABI」ができあがった。一見するとシンプルだが、千筋模様を均質な厚みで薄く削ぐには、かなりの技術と集中力が必要だとか。熟練した職人だけが持っている高度な技なのだ。

しかも、ここから小野さんは発想を膨らませ、「もっと大判のもの」にトライした。できあがったのは約20cm四方、厚さが3mmほどの羊羹。表面の広さを生かして、マーブル柄を施し、スカーフやハンカチを思い起こさせることから、フランス語でスカーフを意味するカレという言葉を用い、「カレ ド 羊羹」とネーミングした。少し贅沢な気分で眺め、贈ってもらおうという意図から、これはあえて、婦人服のラグジュアリーブランドが並ぶ4階フロアで展開することに。伊勢丹にとってもとらやにとっても初の試みだ。

2mm強の薄い羊羹「NATSU NO TABI」

大判の羊羹「カレ ド 羊羹」


模様が異なる「カレ ド 羊羹」

“みらいの魔法”=テクノロジーの体験を贈る

もうひとつは、1階中央の「みらいの魔法を贈ろう」コーナーで、「人に贈りたくなる魅力的なテクノロジー」をさまざまに提案した売り場。リーダーを担ったのは、ジャーナリストの林信行さんで、ITやデジタル分野はもちろん、デザインや教育など、幅広い領域を視野に入れ、多面的な活動を繰り広げている方。普段から「デジタルに強い人とファッションが好きな人が結びつくことで …

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