2016年 カンヌ 日本の受賞は全部で49作品
パナソニック「Life is electric」をはじめ、デザイン部門は相変わらず強い日本。しかし、他の部門が厳しい結果となった。カモ井加工紙「MT」と資生堂「HIGH SCHOOL GIRL?メーク女子高生のヒミツ」はこれまでに数多く国際広告賞を数多く受賞しているが、今回も2部門以上で受賞。オーストラリア政府観光局「GIGA selfie」も3部門での受賞となった。
カンヌライオンズに見る世界の広告2016
サイバー部門&クリエイティブデータ部門Wグランプリ
ING「The Next Rembrandt」J.WALTER THOMPSON,Amsterdam(オランダ)
17 世紀のオランダを代表する画家レンブラントの全346作をデジタルスキャンで完全データ化。人工知能技術(AI)を用いて詳細に解析し、3Dプリンターで肖像画の“ 新作” を創作した。油絵の具の凹凸まで忠実に再現し、レンブラントが描いた油絵にしか思えない出来栄えとなった。
The Next Rembrandtプロジェクトは、芸術文化事業の一環としてアムステルダムに本社を置く総合金融グループINGと米マイクロソフトが出資し、デルフト工科大、美術専門家の協力を得て2014年にスタート。人工知能などの最先端技術を駆使して“光と影の魔術師”レンブラントの“新作”を創るという試みだ。
まずは3Dスキャンなどでレンブラントの全346作からデータを採取するところからはじまった。色や形、線のほか肖像画であればモデルの男女比、服装、年齢などあらゆる有用なデータをコンピューターに入力していくのだが、作業を進める上で、描いた年代や保存状態に差があることに気づいた。「正しいデータの取得に苦心しました。保存状態が異なる作品の差を埋める方法として応用したのが、手描きの絵をデジタルで保存する日本の漫画のアルゴリズムでした」(Bas korstenさん)。
こうして集めたデータを、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人工知能(AI)技術を使い、レンブラントはどのような顔の形を好んだのか?どのように線を描き、構成したのか?などの色遣いや構図、顔のパターンなど特徴を分析・習得。作品に共通する題材を分離し、もっとも一貫性のある題材を導き出した。それがこの中年の白人男性の絵(右下)。ヒゲをたくわえ、黒い服を着て、白い襟飾りと帽子を身につけている。