世界の拠点で協業制作 打ち合わせの舞台裏
日立グループでは、今年5月より世界19カ国で新グローバルブランドキャンペーンを一斉ローンチした。東京の日立製作所ブランド・コミュニケーション本部と世界各国の日立グループの拠点、さらに電通、同グループの電通BOSと共に制作にあたった長期プロジェクトだ。その舞台裏にはどのような打ち合わせがあったのか。
トップクリエイターのすごい打ち合わせ
「手口ニュートラル」を掲げ、イベント、デジタルからPR、マス広告まで自在にプランニングを行う博報堂ケトル。その打ち合わせは、どのように進められているのか?クリエイティブディレクターの橋田和明さんとプランナーの畑中翔太さんに、“ケトルWAY” の打ち合わせについて話してもらった。
「明文化されているわけではないですが、“ケトルWAY”の打ち合わせのスタイルは確かにあると思います。その特徴を挙げるなら、ひとつは『短い』ということ。2時間以上かけることはあまりありません」と博報堂ケトルのプランナー、畑中翔太さんは話す。
会議を短くまとめられるのは、拡散と収束のタイミングをきちんと見極められているから。「皆せっかちなので、だらだらと会議したがらないんです。だいたい1時間を超えたら、アイデアを広げるフェーズから、フィジビリティ(実現可能性)の議論に移り、その日のゴールにたどり着くための準備をします。そのために冒頭で今日の打ち合わせはここまでと決めておき、そのためのタイムマネジメントをしています」。
アイデアを広げる拡散のフェーズでは、「よく笑う」のが博報堂ケトルの打ち合わせだと畑中さんは言う。3年前に博報堂からケトルに移った時、まず驚いたのが、打ち合わせが賑やかなことだった。雑談から入り、よく笑い、よくほめて、人の話をよく聞く。博報堂ケトルのメンバーは、基本的にプランナーかディレクター。コピーライターやデザイナーのような職人(自分で手を動かして作る人)ではない。「皆の中心にいて物事を動かしてはいるけれど、一緒に作ってくれる仲間がいないと形にすることはできない、というのが僕たち“ケトラー”です。だから、皆をモチベートする必要があり、こういうスタイルになったのではないでしょうか」と畑中さんは言う。
博報堂ケトルの打ち合わせには、営業、プロデューサー、Webディレクター、カメラマン、映像プランナー、印刷会社の担当者など職種横断で多彩なメンバーが参加する。「打ち合わせに参加している人たちのレベルも年齢もバラバラです。普段接点のない人同士が出会う打ち合わせになっているんじゃないかと思います。一体この人は何者だろう?と思う人がオフィスにいることもよくあります(笑)」(畑中さん)。考え方によっては、自分の領域以外のことが話し合われている時間は無駄になってしまうのでは?とも思われそうだが、なぜ全員が一堂に会することにこだわるのか。
「分科会的に切り分けると、全員の中でそれぞれと意志が通じているのが自分だけになってしまうんです。でも“チーム感”が強まるほど競合にも勝てるというジンクスが僕にはあるので、そうしたくなくて。他の領域のことも関係ないと切り捨てない、そう思わない人が増えた方がプロジェクトは上手くいく気がします」と畑中さんは説明する。
クリエイティブディレクターの橋田和明さんは、「営業やプロダクションのプロデューサーも含めて、打ち合わせに参加するというより、企画に参加してほしい、と思っています」と話す。「クリエイティブ職のスタッフ以外のメンバーの中には、自分たちは企画する人ではなく進行する人だと思っている人もいます。けれど、実は皆が面白いアイデアを持っている。その人たちがアイデアを語り出すところまで来れば、それがいい打ち合わせだと思います」。
だから、発言しやすい雰囲気づくりには特に気を配る。「人一倍、変なアイデアやダメなアイデアをしゃべったり。『バナーをバナナにするってどうかな?』とか(笑)。誰かが髪を切ったとか、服を買ったとか、今日はメガネだね?など人を見て気づいたこともすぐ言います。人って、やっぱり自分に興味を持ってくれると嬉しいと思うので」。
あえて新人営業に語りかけるのも、橋田さんがよく使う手。「フレッシュなアイデアは、業界のルールや慣習に捉われていない人から生まれます。新人だからこそ、自分が気づかなかった新しい切り口や現象を突然テーブルに出してくれることもある。自分の好きなことや方向性は ...