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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

テクノロジーが主役変革を遂げる米国のミュージアム

楓セビル

GALLERY ONEは、この巨大なインタラクティブ・ボードで始まる。CMAのパーマネント・コレクション4100作品をすべてハガキ大の大きさにして展示。観覧者が自分の好きな作品を見つけてそれにタッチすると、作品が大きなテレビ画面大に拡大される。

巨大なミュージアム・ビジネス

アメリカ人はスポーツ好きだ。だが、アメリカには、メジャーリーグの野球戦、フットボール戦、ホッケー戦の観戦にスタジアムに出かけるスポーツファンの数より、ずっと、ずっと多くの人間が足を運ぶ施設、場所がある。ミュージアム(美術館・博物館)である。

全米には現在、大小取り混ぜて1万7500のミュージアムが存在すると、米国美術館・博物館同盟(The American Alliances of Museums)は報告している。2008年、同同盟が行った調査によると、その年、スポーツ・スタジアムに出かけた観客の数は1億4千万人。これに比べ、全米に点在する大小のミュージアムを訪れた人の数は8億5千万人だったという。「観光客から数億ドルの観覧料を集め、彼らを含む来館者の情操教育を行う。コミュニティに密着した文化施設として、ミュージアムは重要な任務を果たしているのだ」と、アメリカ合衆国の非営利・公共のラジオネットワークに出演する評論家ボブ・マンデロは語っている。このようにミュージアムは、文化的にも、経済的にも大ビジネスなのである。

このミュージアムが、いま、大きな転換期を迎えている。デジタル化の波、新しい消費者の台頭、経済的な苦境などの中で、これまでのように、芸術という名において、ビジネスとは関係のない象牙の塔の中に安住していることは許されなくなった。最大の収入源であった個人、法人のグラント(寄付金)の減少と同時に、インターネットの普及で、すべてが“フリー”(無料)であることを期待する人々から入場料に対する不満が募り、同時に“ボアリング”(退屈)というレッテルを貼られ、若者のミュージアム離れが増加していることなどがそれだ。こうした消費者をミュージアムに引きつけるには、新しいコンセプト、魅力を持ったミュージアムに生まれ変わることが必須だ。そこで、多くのミュージアムは、いま、「テクノロジーとアート」との接点に新しい世界を見つける努力を開始している。このコラムでは、新しいミュージアムのモデルとして米国だけでなく、世界的に注目を集めている2つの美術館を紹介したい。

クリーブランド美術館(CMA)

スマートフォン、タブレットにダウンロードするアプリ「ArtLens」は、CMAの水先案内役を果たす。

最初に動いたのは、オハイオ州クリーブランド市にあるクリーブランド美術館(以下CMA)である。CMAは2010年、有名な …

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