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55周年特別企画 クリエイティブ未来会議

ミラノサローネに参加して、僕たちデザイナーはこんなことを考えた!

植原亮輔×小野直紀×柿木原政広

2016年4月、イタリア・ミラノで第55回ミラノサローネ国際家具見本市が開催された。若手デザイナーから著名なブランドまで、個人、企業合わせて参加社は2000以上、近年は日本企業やブランド、個人のデザイナーの参加も増えている。そんなデザインの祭典に、今年初参加したKIGI 植原亮輔さん、5年連続で参加しているYOY 小野直紀さん、隔年で参加している10inc. 柿木原政広さんに、グラフィックや広告の領域のデザイナーが参加することの意味、現場で感じたこと、考えたことを聞いた。

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会場で得たリアルなデザイン体験

柿木原▶ 僕は2012年から、10inc.で立ち上げたゲームブランド「Rocca SPIELE(ロッカシュピール)」(以下 Rocca)でミラノサローネ(以下 サローネ)に参加しています。普段グラフィックデザインや広告の仕事をしている僕たちデザイナーが、家具・プロダクトの見本市であるサローネに出展するとはどういうことなのか。あらためて話をしてみたいと思い、今日は二人に声をかけました。

小野▶ 僕はパートナーの山本侑樹と2人でYOYというデザインスタジオを設け、プロダクトをつくっています。YOYは2012年から今年まで、5年続けて出展しました。きっかけは2011年に山本とサローネを観にいったこと。僕は空間デザイン、山本はプロダクトデザインと領域が少し違うのですが、一緒に見ていくうちに、お互いの視点の違いが面白く、テーマを決めてアイデアを出しながら見て回ったんです。実際にサローネに足を運んでみると面白いものだけではなくて、普通のものもあり…。これだったら僕らでも許されるのではないかという気持ちにもなり、明確な目的はなかったけれど、よし来年は出そう!とその場で決めました。最初に出したサテリテは、いま活躍している人たちが賞を獲って仕事を始めるきっかけになった場所。僕たちも期待を抱きつつ、そこに出展しました。

柿木原▶ 僕も2011年に視察に行って、翌年から出展しています。最初に行ったときはまだ出展するつもりはなくて、行けば何か見えるかなという感じでした。そのときマルニ木工の方に紹介していただいたのが、Spazio Rossana Orlandiというスペース。ここは初心者が簡単に出展できる場所ではなかったのだけれど、人づてにアプローチして、1年間かけて口説き、2012年に出展しました。でも、なんとか出展はできたものの、商品を売るための細かいルールを誰も教えてくれなくて…。会期直前になんとか売れるようにしたけれど、1年目はいろいろなことに振り回されっぱなしでした。

植原▶ 僕は今年KIGIで初めて出展しました。実はドラフト在籍時の2004年に、宮田識さんや渡邉良重さんと一緒にサローネに行ったんです。フラワーベースを売りたかったんだけど、売れる可能性が未知数だった上に、注文を受ける体制が当時はできておらず、翌年の出展をあきらめました。

2012年の独立後は、まずKIGIという会社を運営していくことに精いっぱいで…。その後、海外での展開についていろいろな方向を探っていましたが、昨年スタートしたプロダクトブランド「KIKOF」を本格展開するにあたり、どうしようかなと思っていたときに、柿木原さんから話をいただき、乗せてもらったというわけです。

    RYOSUKE UEHARA'S WORKS

    KIGIの展示の様子。


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    植原亮輔(うえはら・りょうすけ)
    2012年KIGIを設立。主な仕事にPASS THE BATONのVI、シアタープロダクツのグラフィック、D-BROSのプロダクトなど。滋賀県の伝統工芸の職人達と立上げたKIKOFのブランドデザインで2015年東京ADCグランプリを受賞。

柿木原▶ Roccaは10年、20年、それこそ100年先にきちんと残るプロダクトにしたいと考えています。「Rocca SPIELE」の「SPIELE」はゲーム以外に「プレイ」という意味を持つのだけれど、どちらかというとゲームを売ることより、Roccaを軸に自分たちがどう動きまわったり、立ち回ったりできるのか、そこを重視しています。だから、直近の販売数はあまり気にしていません。そんな僕に比べると、YOYはサテリテからスタートして、そこでメーカーから声がかかって商品化を実現し、1年ごとにきちんと結果を残している。最初にどんな計画を立てたんですか?

小野▶ サテリテという場所は35歳以下しか出せない上に、出展は3回までと決められています。最初に3年連続で出すことを決めて、2年目以降は結果が出なかったらやめようと、自分たちを追い込んでいきました。2年目に絵の椅子が話題になり、3年目にも2つ賞をいただき、さて4年目はどうしようかと思ったときに、Roccaも出展しているOrlandiから声がかかりました。そして5年目の今年は自分たちがやりたいことがマンネリ化していたので、それを打破すべく、これまでの作品をあえて並べ、これを機にそれらを忘れようという試みとして個展にしました。今回は、次を考えるためのステップととらえました。

柿木原▶ 参加する度に思うのだけど …

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