広告界20代クリエイター座談会「会社も業種も超えていくような仕事がしたい!」
いま広告界は、未来を担う若手クリエイターたちの目にどのように映っているのだろう。世代別会議は、コピーライター、プランナーとアートディレクターによる20代5人のトークからスタート。この大きな変化の時期に広告界に入ってきた彼らは、広告の仕事に何を感じ、どんなやりがいを見出しながら、日々の仕事に取り組んでいるのか。
55周年特別企画 クリエイティブ未来会議
現場で第一線を走る30代。クライアントとの向き合い方が変わり、自身の専門性や知見が問われるようになる。これからのキャリアをどうつくっていくか、その足固めをする時期でもある。3人のコピーライターが集まり、“次の一歩”の踏み出し方を探った。
渡辺▶ 僕は2000年に博報堂へ入社してからずっと、名刺はコピーライターです。一時体調を崩し、広告はもうやめようかと考えた時期もありました。でも、好きだから続けてこれたし、できるところまでやってみようと。29歳で独立して、今年で丸10年経ちます。フリーの立場だと、いろいろなクライアントや広告会社と自由に組めるので面白いと感じることが多いですね。
山本▶ 渡辺さんのようにコピーライター/CDとしてつくるテレビCMっていいですよね。クリエイティブの軸がはっきりしています。
新沢▶ 概念がシンプルだからでしょうね。
渡辺▶ 2人とも、グラフィック広告はやるんですか?
山本▶ 最近久しぶりにやりました。でも、制作はどちらかというとCMプランナーの方が向いているのかも。
渡辺▶ 電通はCM、グラフィックと明快に分業することが多いですよね。博報堂では基本は一緒。広告会社によって、仕事のアプローチが大分違いますね。
新沢▶ TBWA\HAKUHODOは少数精鋭で、分業する贅沢は許されません(笑)。兼業が多いけれど、仕事の領域が広がって面白いです。変化の著しい先端メディアの活用も求められるからデジタルの知識も身につく。これは世界的な傾向かもしれませんが、最近「クリエイティブ」という名刺をもって働くプロモーション担当やデジタル担当が増えていますよね。
山本▶ 電通でも特に新しいことを求められる場合に、CDの役割を求められ、営業から若手に直接依頼がいくこともあります。自分の領域を決めつけずに仕事をする雰囲気が、若手になればなるほどその意識が高い傾向にあります。良い反面、専門性が希薄になると危惧する声もあります。
渡辺▶ 良し悪しですよね。最近の打ち合わせで感じるのは、コピーや企画の一歩手前のメモばかりテーブルの上にあって、そこから前に誰も進めようとする人がいない。大枠の話だけして終わってしまう。そういう打ち合わせに出席していると、早く言葉を決めたいのにとモヤモヤする。
新沢▶ 概念勝負は海外の働き方に近いのかもしれません。でも、それを誰がフィニッシュするのかが本当に大事だと思っています。僕らより若い世代はSNSで情報を拡散する方法やデジタルにすごく詳しい。だけど彼らがフィニッシュできるかというと、できない人が多くなってきている気がする。そういう意味で、僕らの世代はデジタルとアナログに片方ずつ足を入れた中間にいます。徒弟制度で育った最後の世代かもしれない。だからこそ見える風景もあるんだと思います。
渡辺▶ たしかにコンテを描かない若手は増えているかも。お2人はもう教える立場ですよね?
山本▶ はい。できるだけ個性をつぶさないように、基本を中心に教えるようにしています。それとチームワーク。誰と組むと最大化できるのかを見極めること。ADとコピーライターがいれば良いCMは作れる。ADが持つ強いイメージの力を積極的に借りれば、もっと新しい広告の可能性が広がるはずなんです。
新沢▶ そうなるとコピーライターの役割はますます重要になるでしょうね。メディアが多様化する中では、概念が明確でないとバラけてしまう。最終的に概念をどんなコピーにするかが広告にとって重要で、求められる役割の大きさは昔の比ではありません。しかし、いいコピーライターは減少しています。特に若い世代にいません。
山本▶ 最近は若手CMプランナーも少ない上に、仕事が集中して、専門性を身につける暇がないという声を聞きます。
新沢▶ そうなると何を目標に下を育てればいいのか? 10年後に今と同じ広告をやっているとは限らない。今の成功事例もまったく参考にならない …