「なんでだろう」から始まるグラフィックデザイン
私の母はイギリス人、父はスリランカ人で、名古屋にあった当時の実家は、さまざまな文化が入り交じった資料館のような空間でした。母は英字新聞社の美術記者として働いていて、私の部屋は母の書斎も兼ねていました。
デザインの見方
今から3年半ほど前、東京都現代美術館で開催された「MOTアニュアル2012 Making Situations,EditingLandscapes 風が吹けば桶屋が儲かる」展の広告を電車内で見かけました。作品のビジュアルはなく、文字だけで構成されたストイックなデザイン。立花文穂さんが手がけたものだとすぐに分かりました。もともと僕は、立花さんのデザインが好きで、それがきっかけとなり、展覧会を見に行くことにしました。
会場の入り口でA3サイズの展示概要を渡されました。それが、今回紹介するデザインです。ザラっとした質感の黄ばみがかった紙は片面に情報が印刷されています。入口にも無造作に積んでありました。手にした瞬間、目が釘付けになりました。これほど細部の細部にまでこだわった展示概要を見たことがなかったからです。熱の入れ方が半端ではない。立花さんらしい、と感動しました。
まず、見た目が美しい。そして、これまでの立花作品と同様に …