異業種コンテンツに飛び込む武器「パイロット」の可能性
映画や番組の制作前に試験的につくられる短い映像「パイロットフィルム」をご存じでしょうか。名作映画から最新作まで、そうした貴重な映像を集めた映画祭「渋谷パイロットフィルムフェスティバル」が、2024年12月に開催されました。発起人を務めたのは、Whateverの川村真司さんと、CHOCOLATEの栗林和明さん。
青山デザイン会議
クリエイティブ業界で働く人やデザインを学ぶ学生を対象に、ケッセルスさん自身のプロジェクト紹介を中心としたレクチャーが3月6日に行われた。タイトルは「Confusion makes the worldgo around(混乱が世界を回す)」。その様子をダイジェストで紹介する。
【エリック・ケッセルスさんと永井一史さんの対談記事はこちら】
私たちは現代の生活で身の回りにあるテクノロジーや製品に“完璧”を求める傾向があります。真面目であることは大切な要素ですが、クリエイティブという行為においては“真面目すぎる”ことには問題があると私は思っています。少なくとも1日1回はバカらしいことをするぐらいがちょうどよいのではないでしょうか。
例えば、私はケッセルスクラマーを設立する前に勤めていた広告会社で、今のパートナーであるヨハンと2人で「鳥の着ぐるみを着て会社に行ったら、職場が面白くなるんじゃないか」と話して、お揃いの着ぐるみを着て出社したことがあります。すると、会社から2週間後に「あなたのように優秀すぎるクリエイティビティは弊社にはもったいなく…」と書かれた解雇通知でクビを宣告されました。それをきっかけにヨハンと2人でやりたいことをやろうとケッセルスクラマーを立ち上げたのです。
ケッセルスクラマーはアムステルダムに本社、ロンドンに支社があります。本社は街中に使われていない教会がたくさんあったので、教会を改装してオフィスにすることにしました(01)。教会をオフィスにすることにはメリットがあって、母親に「毎日教会に行っている」と話すことができます(笑)。ロンドン支社では、ギャラリー、ワークスペース、作品を売るなどの活動をしています。
私はクリエイティブには「極端であること」が必要だと思っています。作品に対して「大嫌い」というリアクションがあるときは、「大好き」という人も現れるものです。一方で、誰も何も言ってこないような“中間の作品”をつくると、好きな人も嫌いな人も現れません。ここで、当社が手がけた極端な例をいくつか紹介します。
例えば、カルバンクラインの靴の広告では、当時打ち出していたモノクロの洗練されたイメージに対して、片足のないモデルを起用して注目を集めました。ディーゼルの広告では、現代の若者の生態をナンセンスなコピーとビジュアルで描くことをずっとしています。この時は、若者の間に「若いままでいたい」という願望があると感じたので、「永遠の若さの秘訣」を伝授するシリーズを制作しました。ここには「DrinkUrine(尿を飲め)」と書いてあります(02)。
地域キャンペーンの「I amsterdam」は12年間使い続けられているアムステルダム市のテーマです。しかし、発表当初は色々な意見が出て、賛否両論でした。女性向けのプラットフォームを展開している団体WOMEN inc.の広告(03)では、女性の生涯年収が男性に比べて30万ユーロ少ないと言われていることから、「私たちの30万ユーロはどこにあるの?」と女性が棚や洗濯物の中を必死に探しているイメージを打ち出しました。これは携帯電話キャリアBenの広告(04)。オランダでBenは人の名前であると同時に、「I am=私は」という意味でも使われる言葉です。この広告では携帯電話の広告ではあまり扱われることがない(マイノリティである)移民や高齢者にモデルとして出演してもらい、移民の写真には「私は受け入れられている」、高齢者の写真には「私はここにいる」というコピーを乗せました。
デュッセルドルフの美術館のロゴとサインをデザインした仕事もあります。美術館で使われる言葉ってつまらない堅いものになりがちでしょう。そのイメージを壊そうと思って、館内のあちこちにロゴとお揃いのフォーマットで、色んな言葉を貼りつけていったんです(05)。例えば、地面のタイルの上に「ここはハグするための場所」「踊る場所」、非常用のライトがつくところには …