普段から、職種の違う同世代の友人としてよく話すというアートディレクターの矢後直規さんと、写真家の奥山由之さん。奥山さんは若干24歳、先鋭的で、斬新な撮影手法で知られている。表現について感じていることを語ってもらった。
お互いの視点から見える景色に興味がある
矢後:初めて会ったのは、2012年のギャラリーROCKETでの展示だったよね。僕は当時上司だった長嶋りかこさんの展示のアシスタントを務めていて、奥山くんは展示風景を撮影していた。
奥山:大学2年生の時ですね。ROCKETの展示を記録撮影する仕事をしていて。
矢後:後でその写真を見た時、いわゆる記録写真とは全く違って、ひとつの作品として成立していたので驚きました。それからテニスコーツのツアーポスターやラフォーレの年賀状などの仕事を一緒にするようになって、今は奥山くんの写真集の装丁も手がけさせてもらっています。
奥山:矢後さんとは普段からいろいろな話をしますよね。今進めているお仕事の話、写真、広告、ファッションについて…。仲がよすぎて、ADである矢後さんに僕の写真集のADは誰がいいかなんてよく考えたら失礼な相談までしてました(笑)。
矢後:僕らは仕事上のポジションが違うから、相手が見えている“自分とは異なる視点”を知りたがっている感じかな。奥山くんは少しだけ博報堂にもいたんだよね。
奥山:ROCKETで皆さんがあまりに楽しそうだったから、ADになりたいと思って。美大出身じゃないと試験を受けられなかったので、コピーライターで入社して、2、3カ月だけ在籍していました。
矢後:今は、一緒に「境界線」をテーマにしたシリーズ写真を制作中です。
奥山:矢後さんに「今までの作品をまとめてポートフォリオを大事な人に配りたい」と相談したら、表紙案をいくつかご提案してくださって、そこからアイデアが発展して、新しいシリーズ作品を作ろうということになったんです。「ボーダーラインが存在する世界を描く」という企画で、街中にゴールテープを突然出現させて、ゲリラ的に撮影しているんですが、これがなかなか大変で(笑)。2017年に発表予定です。
“定着ありき”で考えない世代
矢後:奥山くんは映像も撮っていた経験があるからか、写真に時間軸を感じます。わかりやすく整理して記号化するというよりも、いろいろな情報が含まれていて、切り取られた瞬間の前後や、その空間の空気感がリアリティを持って伝わってきます。
奥山:広告は見られる時間が数秒だから、瞬時に理解できるように写真にも記号化がある程度必要なのだと思います。でも、例えば「おいしい生活」が単なる記号ではないように、写真もコピーも、人の記憶に残るものは結局言葉にできないものだと思う。今の広告って「この商品を使うとこうなります」と情報を説明的に押し付けすぎていませんか?そんなに受け手は読解力なくないと思うんですよね。
矢後:広告は企画の段階でクライアントに言葉で説明しなければいけないから、その構造がそうさせている部分もあるかもね。
奥山:僕は、矢後さんのデザインにはレイヤーがあると感じるんです。1つのことをバシっと説明するのでなく、複数の要素をつないで全体で何かを伝える …