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グッドデザイン賞から見えた未来へのスキーム

広がる領域と、未来への可能性

2015年グッドデザイン賞は、新任となる永井一史審査委員長、柴田文江副審査委員長のもと、総勢80人(うち海外12人)の審査委員会を編成して約5カ月をかけて審査。今年度よりフォーカス・イシューの設定という新たな試みにもチャレンジした。審査対象数3658件、受賞件数1337件は昨年を大きく上回った。全ての結果発表後、永井審査委員長に話を聞いた。

グッドデザイン賞 審査委員長 永井一史(ながい・かずふみ)
アートディレクター/クリエイティブディレクター。HAKUHODO DESIGN代表取締役社長。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科教授。1985年多摩美術大学卒業後、博報堂に入社。2003年、デザインによるブランディングの会社HAKUHODO DESIGNを設立。さまざまな企業・商品のブランディングやVIデザイン、コミュニケーションデザイン、プロジェクトデザインを手がける。毎日デザイン賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、ADC賞グランプリなど国内外受賞歴多数。

来たる社会の重要な課題 フォーカス・イシュー

グッドデザイン賞の審査委員長就任の打診を日本デザイン振興会から受けたとき、正直言って少し悩みました。審査委員長は歴代、プロダクトデザイナーの方々が中心で、私のようなアートディレクターは過去にいなかったからです。審査委員として11年間携わってきた経験を振り返ってみると、デザインはモノ自体のデザインだけでなく、社会の課題解決やイノベーションなどあらゆる領域に広がり、求められるようになってきています。私が審査委員長をすることで、デザインをもっと広い領域でとらえ、デザインが持つ力と可能性を社会に向けて発信するお手伝いができるかもしれないと思い、お引き受けしました。

グッドデザイン賞は歴史が長く、応募から審査、発表、顕彰、作品展示までの一連のシステムがかなり成熟しており、それ自体を抜本的に変える必要はないと思いました。ただ、私なりの問題意識として、応募されたデザインの意義や価値について審査の過程で深くディスカッションされた内容が十分に発信しきれていないのではないか、また応募対象から見出された多様なデザインの可能性を今まで以上に発信していくべきなのではないかという思いがありました。

そこで、来たる社会で解決すべき重要な課題であり、特にデザインの貢献が求められると考えられる領域を「フォーカス・イシュー」として定めました。テーマについては柴田副委員長や日本デザイン振興会と議論して、地域社会・ローカリティ、社会基盤・モビリティ、地球環境・エネルギーなど12の領域を「フォーカス・イシュー」に設定。それぞれの領域におけるこの先のデザインの可能性を見出し、それを社会に向けて発信し、デザインを起点とした運動へと発展させていきたいと考えました。各領域の最前線で活躍する12人にフォーカス・イシュー・ディレクターをお願いし、審査ユニットを横断してフォーカス・イシューの見地から全ての応募作品を観察・評価してもらいました。議論の内容は特別賞審査の参考とし、東京ミッドタウンでの受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION2015(G 展)」の中で「提言」として発表しました。

01 東京ミッドタウンで受賞デザイン全点を展示する「GOOD DESIGN EXHIBITION 2015」を2015年10月に開催した。

社会的イノベーションより身の回りを良くする志向

今年度の受賞作は1337件で、特に優れた「グッドデザイン・ベスト100」は、その中から私や副委員長、審査ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクターが、人とモノ・コトの新しい関わり方、新たな仕組みづくりに挑んだ先駆性などを踏まえて選出しました。受賞作全体の印象として、近年のデザイン領域の広範化の傾向がより顕著になっている気がします。

11年前、私が初めて審査委員として参加した時のグッドデザイン大賞が ...

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