アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
子どもが見て、素直に喜んだり驚いたりするような広告をつくってみたい。そんな風に考えるきっかけとなり、デザイナーとして影響を受けた作品が「としまえん」の新聞広告「史上最低の遊園地。」です。
この広告が掲載されたのは、1990年4月1日。大貫卓也さんが手がけた、言わずと知れた新聞広告の名作です。最近は、企業がエイプリルフールに洒落の効いた「ウソ」をSNSで発信しているのを見かけますが、25年前には相当珍しかったはずです。私は当時、中学生でしたが、学校でも話題になったくらい。クラスメイトがわざわざ家から新聞広告を抜き取って来て、黒板に貼り出したんです。それをみんなで見て「何これ、面白い!」と、ものすごく盛り上がったのを覚えています。
この広告のつくり手が大貫さんだと知ったのは、美大に入ってからのことです。家の近所の図書館で『大貫卓也全仕事』という作品集が目に留まり、何気なく開いて見ると、中学生のときに見た「としまえん」の広告が掲載されていて驚きました。
ほかにも、駅のホームや電車の中で見かけて面白いと思っていたポスターがたくさん掲載されていて、そのときの記憶がどんどん蘇ってきました。それぞれの表現はまったく違うのに …