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2015年注目のクリエイティブチーム(PR企画)

企業の中にデザインの意識と人材を育てるには?―デザインアドバンテージセミナーレポート

アドビ システムズ

2015年10月14日「コンテンツ時代のカギを握るデザインマインド デザインアドバンテージセミナー」が開催され、アドビ システムズの古田正剛さんと日立製作所の西田健さんが登壇した。

01 当日は、クライアント企業や広告会社、制作会社などから約80名が参加した。

デザインを重視することが企業価値を高める時代に

オウンドメディアやソーシャルメディアなど企業が情報発信を行うチャネルが増え、適切なタイミングやコンテクストをつかんだ発信を、スピーディに行うことが求められるようになっている。こうした状況に対応するためには、できる限り社内でクリエイティブの企画・立案から実制作まで携われることが望ましく、いまや「デザイナーはデザイナーの仕事」「編集は編集者の仕事」に限らない。コンテンツを生み出す担当者は、皆デザイナーであり編集者であり、企業の表現を担う存在だ。

そんな中、スピーディで適切な発信ができる体制をどう築き、担当者のスキルや知識をどう高めるか。また、社内にクリエイティブに対する意識をどう醸成していくかをテーマに本セミナーは開催された。

第1部には、アドビ システムズ マーケティング本部デジタルメディア部マーケティングマネージャーの古田正剛さんが登壇。企業から発信するデザインは、製品そのもののデザイン、伝えるための広告のデザインから、既存の販促物や広報誌、はては提案の企画書まで、さまざまな形があると説明。米DMI(Design Management Institute)の調査によれば、デザインを重視する企業は一般企業と比べてこの10年間の間に219%企業価値が向上しているという。デザインを重視することが企業価値を向上させる大きなポイントになっていると話した。

続けて、こうしたデザインに注力する企業として、アドビクリエイティブクラウドを活用する企業の事例を紹介。クラウド上にあるライブラリを活用しながら、チームで有機的に連携して制作するスタイルや、世界の複数オフィス間でライブラリを共有することでデザインの一貫性を確保するグローバル企業の例が示された。

古田さんは、こうしたフロー構築のキーワードとして「コンテンツ・ベロシティアンド インパクト」(コンテンツの速さとインパクト)を挙げた。「いまはさまざまな計測・解析ツールがあり、視聴側も新しい情報にとても敏感になっている。そこで、ユーザーの反応を見ながら、新しいコンテンツを開発したり、コンテンツを改良していくことが大事。スピードとそもそものコンテンツの素晴らしさ、2つを両立していくことが求められている」と話した。

さらに、その場でフォトショップを使ってモバイルサイトを作るクリエイティブクラウドのデモを実施。デスクトップで作業した結果が、モバイルの実機のプレビューサイトにリアルタイムに反映されていく。モバイルアプリやストックフォトサービス(クリエイティブクラウドマーケット)も備え、スピーディに作り手の要請に応えるサービスであることを示した。

BtoB事業を伝える日立のWebサイトブランド戦略

続けて、第2部では日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 宣伝部 部長代理 西田健さんが「日立Webサイトのクリエイティブへの取り組み」をテーマに講演を行った。西田さんは、同社の宣伝部でマス広告の担当を経て、今は同社のオウンドメディアなどWebクリエイティブを担当している。「日立グループの売上の9割以上は実はBtoB。そこで、国内外にこのBtoB事業を伝えるブランド戦略に近年注力している」と話した。日立と言えば、テレビ番組協賛やテレビCMから家電のイメージが強いが、本来の事業領域を正しく伝えることがグローバルでも展開されるWebでは重要なミッションになっている。

日立のコーポレートサイトは、2014年以前はトップページビジュアルをほぼ毎月制作するスタイルになっており、西田さんはこのビジュアルを最大限にブランドを表現するものにしようと腐心してきた。講演中は、その中での成功例や失敗例のエピソード、調査から得た気づきなどが紹介された。こうした取り組み、さらにデザインガイドラインの刷新の結果、同社のコーポレートサイトは、Webグランプリで優秀賞を受賞するなど、さまざまなアワードでも高く評価された。現在は、動画を中心とする形で運営されており、よりブランドをエモーショナルに伝えるものになっている。

デザインのスキルと理解を社内で高めていくには?

第3部は特別対談と題し、社内スタッフに求められるスキルの変化や人材育成の取り組み、社内のデザイン意識の高め方などについて、ディスカッションが行われた。西田さんは「マス広告は伝統があり、業界が確立されていて、フローも洗練され、ルール化されている。Webは役割が定まっておらず、いい意味で何でもできるが、活躍に見合った評価がされにくいというデメリットもある。両者は全く別物」と語った。

現在、日立グループには約1500人のWeb業務に関わるスタッフがおり、西田さんはこうしたスタッフへの教育にも力を入れている。「月に1回程度、Web担当者を集めてセミナーを行っている。Webは未経験者が担当になることが多く、自分の部門の業務のかたわらWebを兼務している人も少なくない。クリエイティブだけではなく、ITやシステムの知識も必要になる。だからこそ、社内にスキルアップの場を設けることが必要だと考えた」という。

同社では、初級、上級、エキスパートというようにWeb担当者に必要なスキルを独自に定め、会社から認定が与えられる制度を作っている。それが担当者が学ぶ一つのモチベーションにもなっているという。こうした取り組みを約10年続けた結果、社内にWebクリエイティブについての共通認識ができつつあり、また部門を超えたWeb担当者の横のつながりが生まれたことを挙げる。とは言え、異動で担当者が変わってしまうと、スキルや知識が伝承されないという大企業ならではの悩みもある。「そういう時、作業環境や素材を共有できるツールが力を発揮すると思う」と西田さんは話した。

また、古田さんは「CMOがいる海外の企業に比べて、日本の企業はデザインに対する経営層の理解はまだ十分ではない」という。それを受け、西田さんは「同じ言葉を使えるようにすることがまず第一歩だと考え、『オウンドメディア』など重要なWebマーケティングのキーワードを経営層に直接説明し、覚えてもらうようにした。そうすると話も通りやすくなる」と自らの仕事の中での実践を紹介。古田さんは「現場は『自分たちがわかっていればいい』と考えがちだが、西田さんのような方が、会社の中で同じ言葉を同じ認識の元に使えるように努力されている。こうした働きかけで、Webの重要性が社内で認識されていくのだとわかった」と話し、現場で実践を重ねてきた2者ならではの知見が交換されたセミナーとなった。

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02 アドビ システムズ マーケティング本部デジタルメディア部マーケティングマネージャー 古田正剛さん。


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03 日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 宣伝部 部長代理 西田健さん。

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