今年9月、京都で関西在住のデザイナーたちが企画した展覧会が行われた。日々制作する際のプロセスを視覚化する展示においてアートディレクター 増永明子さんが展示したのは、40個のトフィー。これは増永さんがトフィー専門店「BALYET」を立ち上げるまでの軌跡だった。
オープン1カ月前からデザイン開始
トフィーとは、キャラメルをベースにチョコレート、ナッツやフルーツなどを載せたお菓子。増永明子さんは今年3月、日本にもまだ数少ないトフィー専門店「BALYET(バルエット)」のブランディングとパッケージデザインを手がけた。「試作品ができてから毎日、トフィーを食べながら、ブランドやパッケージのイメージを膨らませていました。だから、この展示は、まさにBALYETの制作のプロセスなんです」。
「BALYET」を立ち上げたnennenから増永さんにディレクションの依頼があったとき、同社ではオリジナルトフィーを開発すべく、まだ試行錯誤の途中だった。「味もさることながら、形と大きさを検討しながらの開発。トフィーをようやく口にすることができたのが、ショップオープンの1カ月前でした」。
増永さんはクリエイティブディレクターとして、これまでにお菓子などの商品開発に始まり、多くのブランディングを手がけている。その経験から常に心がけているのは、「徹底的に情報整理をすること」と「現場を見ること」。「これまで関わった仕事の多くは、商品開発から参加しています。お店に足を運び、販売スタッフや商品開発など現場の人の意見を聞き、自分の目で確かめた上で情報を整理。それからデザインを考え始めるので、パッケージも自然と形になっていくんです。しかし、BALYETは商品も完成しておらず、決まっていたのはネーミングのみ。そしてSNSを使って販促を行うということでした」。
ターゲットは女性。大阪のファッションに強い商業施設ルクアイーレへの出店。そして専門店がほぼない、日本では新しいお菓子であること――。数少ない情報の中で、増永さんは「ファッション」がひとつの切り口になる。オーソドックなスイーツショップが多い中、フォトジェニックに仕上げることで、ほかとの差別化が図れるのではないかと考えた。そして ...
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