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パッケージデザインでブランドをつくる

130年前のボトルを復刻

プレミアム麦焼酎「百年のボトル」黒木本店/水野学

11月1日の「焼酎の日」に合わせ、本格麦焼酎の銘酒「百年の孤独」を製造する黒木本店はプレミアムバージョンの「百年のボトル」を数量限定で発売する。名前の由来となった小説『百年の孤独』の著者、ガブリエル・ガルシア=マルケスさんが昨年逝去したことを受け、哀悼の意を表し、その偉大な功績を讃えるために製造した。ボトルは世界有数のクリスタルブランド「バカラ」に依頼。企画したのはgood design companyのクリエイティブディレクター・水野学さんだ。

01 「百年のボトル」

ブランドとは緻密な作業の積み重ね

宮崎県にある焼酎メーカー黒木本店と水野さんとの出会いは2013年、黒木本店から「ブランドを見直したい」と依頼されたことがきっかけだった。黒木本店は1885年の創業当時からの銘柄である芋焼酎「たちばな」をはじめ、「百年の孤独」や「きろく」「中々」など麦・米・芋で銘酒を生み出している老舗。酒造りは農業であるという考えから、素材である麦や芋、米などを自社農場で生産し、さらに製造過程で生じる廃棄物を有機質肥料として有効利用している。土作りからこだわる生産体制を築いており、約10種類あるどの焼酎銘柄も全国各地にリピーターが数多くいる。

盤石な経営にブランディングは不要のように思われるが、黒木本店が求める理由は大きく二つあった。一つは、商品だけでなく企業ブランディングに着手し、地盤固めをしていきたいという思い。もう一つは現代表の黒木敏之さんから、息子で次の代表となる5代目の黒木信作さんに、ブランディングを通じてDNAを継承していきたいという思い。黒木本店のDNAとは焼酎づくりという伝統文化の継承と、前衛を志す変革者の姿勢である。

その哲学を受けて、水野さんが初めに着手したのはラベルやパッケージのリニューアルやツールなどのマイナーチェンジだった。名刺や前掛け、Tシャツのデザインなど細かいところまでリブランディングをしている。正方形を二つ重ねた黒い長方形のロゴマークにも現代から次代へつなぐ“継承”の意が込められている。

「ブランドを、大きな一枚岩のようにイメージしている人が多いのですが、これが大きな間違い。ピラミッドを想像してもらえればわかりやすい。石が積み重なって安定していくイメージです。パッケージやラベル、名刺にネクタイ、前掛け、社屋、スローガン、コピー…石の一つひとつはそういうデザインや言葉などでできていて、緻密な作業の積み重ねによる集合体でブランドは形成されます。要するにすべてにイズムが宿っているということなんですが、これが一番難しい。どの石もきれいに整い積み重なっているのが理想だけれども、いい石ばかりとは限らない。ピラミッドの構造であればその石一つを除いても隣接する石で補うことができますし、最悪そこから崩れたとしても、いい石は残っているのでまた一から積み上げていけばいい。ブランドをそういう風に捉えています」(水野さん)。

「百年のボトル」誕生秘話

麹や水質、酵母はもちろん素材や土まで考える丁寧なもの作りをしている焼酎ブランドをどうやって醸成していくか。ブランディングをしていくなかで水野さんは、黒木本店の銘柄で最高峰の麦焼酎である「百年の孤独」に着目した。同銘柄のなかでも …

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