地場産業のブランディングやパッケージ制作を数多く手がけるcosmosの内田喜基さん。3つの地場産業の仕事からブランディングにおけるパッケージの切り口やヒントについて聞いた。

内田喜基(うちだ・よしき)
1974年静岡県生まれ。2004年cosmos設立。広告クリエイティブや商品デザイン、地場産業のブランディングにとどまらず、ライフワークKanamono Artのインスタレーション・個展を開催。2015年プロダクトブランド「COIL」を、静和マテリアルと共に設立。プロダクトデザインまでフィールドをひろげ、その活動は多岐にわたっている。
空間や演出によってパッケージが機能する
最近手がけた仕事の一つに、江戸時代から続く伝統の布「伊勢木綿」で謹製した高級シャツのブランディング、パッケージデザインがあります。三重県伊勢の特色を生かした日用品を製造する常若屋さんが立ち上げた、「oisesan」という新しいブランドです。ボタンの素材に良質の白蝶貝を採用し、縫製は巻き伏せ縫いにするなど細部まで職人が手間暇をかけ、使い込むごとに伊勢木綿による風合いが表れる白いシャツです。依頼を受けてすぐ現地に足を運びました。地場産業の仕事をするときは、その土地の空気感や温度を知るために必ず現地を訪れるようにしています。「oisesan」のロゴには伊勢のわかりやすいシンボルの一つである夫婦岩をモチーフとして選びました。
このシャツは2万円台の高価格帯で販売されるので、高級百貨店や感度の良いセレクトショップに置かれることを想定し、それに見合うモノを意識して、シャツと同様にシンプルで清潔感のある白い箱型のパッケージをデザインしました。小スペースでも機能し、積まれても立てかけても美しいディスプレイになるように設計しています。これまで数多くのパッケージを手がけてきた知見から、いくらパッケージが素敵でも売り場の空間で生きなければまったく機能しないと考えています。どこに置かれ、どういう風に見えるか。空間や演出によってパッケージが機能することを重視すべきで、計算の仕方によっては、パッケージそのものが広告になり得ますし、ディスプレイが狭い場所でも機能的に美しく見せることができます。
誰にどこで売り、どのように商品を見せたら魅力的か…売り場のシーンを考慮した上でターゲットに響く計算をしないと、いくら製品が優れていてもブランディングは機能しません。「oisesan」は、オシャレ感度の高い人がターゲットなので、コミュニケーションツールのDMも伊勢木綿の糸を使って作りました。DMから直に素材感を伝えたいという考えからです。はじめはパッケージなどコミュニケーションツールの仕事で依頼を受けましたが、「パッケージやロゴよりも大きなブランディングの枠組みから変えなければいけない」という話をさせていただき ...