日本各地に店舗を展開する「D&DEPARTMENT」に、デザイントラベルガイド『d design travel』の発行、渋谷ヒカリエのストアと食堂を併設した「d47 MUSEUM」を運営するなど、ナガオカケンメイさんは地域とデザインをテーマに多彩な活動を展開してきた。ナガオカさんが地域をテーマに活動する理由は何か、東京と地域の関わりをどうデザインしていこうとしているのか。
ナガオカケンメイ(ながおか・けんめい)
D&DEPARTMENT代表取締役会長。1965年北海道室蘭生まれ。1990年、日本デザインセンター入社。原デザイン研究所設立に参加。2000年、東京世田谷に「D&DEPARTMENT」をオープン。2009年より『d design travel』を刊行。日本初の47都道府県をテーマとしたデザインミュージアム「d47 MUSEUM」館長。2013 毎日デザイン賞受賞。武蔵野美術大学客員教授。京都造形芸術大学教授。
東京よりも圧倒的に面白い
地域の面白さに開眼
僕がデザイナーになったのは18歳の頃で、とにかく東京に行かなければデザイナーにはなれないと思っていました。それで愛知から上京し、日本デザインセンターに入社。原デザイン研究所の設立に参加したんです。ところが僕はそこで、毎日企画書ばかり書いていました。研究所内で僕は日々外を見て回って、世の中でこんなことが起こっていると原さんに報告する役割をしていたからです。
そんな日々を過ごすうち、それまでデザイン業界の中のことにしか興味がなかった自分も、社会とデザインのつながりに関心を抱くようになりました。東京だけではなく地域にも興味が湧いてきて、各地の伝統工芸を見に行ってみると、実はオリジナリティにあふれたものがいっぱいある。それが少しずつデザインに見えてきたんです。その時「全国47都道府県のデザインが均一に上がっていったら、日本のクリエイティブはものすごいクオリティに成長するのでは?」とイメージが湧いたんです。
それがきっかけで最初に企画したのが、日本デザインコミッティー「デザイン物産展ニッポン」でした。伝統工芸などをテーマに47都道府県、各地のものを松屋銀座で展示する企画です。今ヒカリエで常設している「d47 MUSEUM」の原点です。松屋銀座で展示してみて気づいたのは、東京よりも圧倒的に面白い地域がたくさんあることでした。やはり、いわゆる主要都市だけでなく47都道府県を常に均一に見ることが面白いし、重要だと再確認しました。
次に手がけたのがトラベルガイド『d design travel』です。それぞれの土地に行ってもらう方法は何か、さらに言えばその土地に定住者を増やすことを考えると、その土地らしさだけを抽出したガイドブックのようなものが必要。そう考え、毎号1県ずつ、最終的に全ての都道府県を取り上げる雑誌を創刊することにしました。
さらに、各地に根を張っていくために …