新しいクリエイターの才能を生み出す教育現場では、どのようなことが行われているのだろうか。全国の小中高へ赴き、黒板に絵を描く活動「黒板ジャック」を学生に指導している、武蔵野美術大学の三澤一実教授。活動を通じて学生に学んでほしいこととは?
美術は“体験”しないと伝わらない
朝の登校、いつものように教室に入ると黒板いっぱいに描かれたチョークの芸術作品が目の前に。「すごい!」「どうやって描いたの?」黒板を前に子どもの輪が広がり、驚きの声を上げる。黒板ジャックが全国あちこちの学校で起こっている。いったい誰が?企画したのは武蔵野美術大学の学生たち。図画工作や美術のゲストティーチャーとして小中高を訪ねる「旅するムサビ」活動の一環として、学生が来たことをインパクトのある方法で知らせて活動を盛り上げようと、2011年からはじまった。これまでに130を超える黒板に描いてきた。
色とりどりの蛇やリアルな恐竜の骨、かわいい犬などチョークの絵は学生が自由にテーマを選ぶ。前日入りして約8時間かけて描いた力作もあるほど。しかし、授業がはじまる前には、子どもたちと絵を消してしまう朝の時間限定の芸術である。「もったいない」という声も聞こえるが、「消えるからこそ、印象に強く残る」と三澤教授は話す。「学校から美術の時間数が減ってきている昨今 …