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世界の広告2015 D&AD

審査員が語る「徹底的に議論する」D&ADの審査

長嶋りかこ(village®)/杉山ユキ(博報堂)/塚田哲也(大日本タイポ組合)

日本から審査に参加した3人のグラフィックデザイナー。D&ADの審査を通して、どんなことを感じたのか。審査員の注目を集めた作品とともに紹介する。

ひたすら議論を続けて賞を決める

Graphic Design部門
長嶋りかこ (village®)

D&AD 2015のGraphic Design部門の審査は、これまでに参加したどの審査会よりもハードでした(笑)。3年前に初めて参加したNY ADCもかなり議論を交わしましたが、今回のほうが議論の対象になる作品点数が圧倒的に多かったですね。

審査の流れは、1日目で作品を数千点から100点にまで絞り、2日目はそれらについて議論するというもの。通常であれば、点数制でさらに絞り込んでから議論すると思いますが、今回は100点すべてについて全員で議論して賞を決めていきました。大変な作業でしたが、とても良かったと思う部分もあって、それは「賞の基準や方向性、作品の背景を全員で共有することができた」こと。D&ADは審査員が毎年異なるし、国が異なれば当然文化的背景も違う、さらに審査員がグラフィックデザイナーか広告デザイナーかで大事にする部分が異なるため、賞の基準を共有するのは大切なこと。これをしないと統一感のない、バラバラな判断や、ただの好き嫌いで賞を決めることになりかねません。

綿密な議論で賞を決める方法は、日本国内で行われるアワードではあまり一般的ではないと思います。日本ではフェアに意見を言い合って、議論をすることがほぼありませんよね。そうすると角が立った、エッジの効いた作品は落とされて、角の丸いものが賞を獲りやすくなる傾向があります。でも、D&ADのように作品の背景などを含めてしっかり議論を重ねることで、エッジのあるものや見落とされてしまう作品を拾い上げることができる。私は健全な審査の方法だと思いました。

私が個人的に好きだった作品の1つは、イエローペンシルを受賞したデザインギャラリーの本「Chamber Collection」(04)

04 Chamber「Chamber CollectionⅠ」

電話帳のように膨大なページ数でしたが、デザイナーの名前や作品情報の整理の仕方、掲載する作品のフォトディレクションがとても丁寧でした。さらに本の小口部分のタグの工夫のされ方が、検索しやすいという機能でありながらも、それがおおいにオリジナリティに繋がっている点もポイントでした。この本は、特別なことは何もしていないのに確実に漂っているユニークさが大好きで、“圧倒的な基礎力”があってこそ成り立っている作品だと感じました。

D&ADに限らず、海外のコンテストの特徴は「日本の作品」というだけで評価が高くなる傾向がある点です。日本の文化的背景を感じる独特のグラフィック表現や …

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