
『あたしとあなた』谷川俊太郎
(ナナロク社)
谷川俊太郎さんの新作『あたしとあなた』は、布張りの表紙に青、白、金の3色の箔。「以前から詩的要素が高くなればなるほど、内容を表すデザインじゃなくてもいいと思っていました」と、装丁を手がけた名久井直子さん。表紙を開きめくっていくと、目に映るのは鮮やかなブルーの紙だ。「谷川さんの詩があまりにも素敵だったこと。そして一行の文字数が少ない形式だったので、一番大事なのはこの言葉を載せる本文の紙だな、と思いました」。この本のために、名久井さんは伝統の高級越前和紙で知られる石川製紙と紙を作り上げた。かつて書籍の本文用紙に使われていた色つきの和紙。そして、簀の目の透かしが入った本文用紙。既に手に入らない、自身が好きな2つの紙が混ざったような紙を目指した。
昨年11月に紙づくりは始まったが、現在の製本に決まるまで試行錯誤を重ね、今年3月初旬にようやく抄造。「この1冊の本のための紙」はこうして誕生した。
谷川さんは「詩集は物としての質感が、他の本よりも大事」と、この本の栞に寄せている。詩集を読むという行為に対する理想形でありながら、工芸品のように美しい本が完成した。

「真夏のサーガ」KIRINJI
(UNIVERSAL MUSIC JAPAN)
兄弟2人のユニットから …