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デザインの見方

串田孫一が教えてくれた 山とデザイン

富田光浩

富田さんが買い集めた串田孫一さんの著書。

串田孫一さんの著書『山のパンセ』を本屋で手にしたのは、今から10年ほど前のこと。出会いは全くの偶然でしたが、表紙の絵に惹かれて中身も確かめず、いわゆる“ジャケ買い〞したことをよく覚えています。家に帰ってパラパラと中を開いてみると、それまであまり見たことのない、抽象画で描かれた山の挿し絵が目に飛び込んできました。実はその頃、絵は気に入りましたが、文章まで読みませんでした。それから数年後に、画家の牧野伊三夫さんに「串田孫一っていいよね」と言われ、あらためて文章まで読んでみると、これがとても面白かった。

僕はこの本を読むまでは、コンクリートの打ちっぱなしや鉄などの“無機質なもの〞をかっこいいと思っていました。山には一切興味がなく、山とデザインは無関係なものだと思い込んでいたんです。でも、『山のパンセ』のモダンで洗練されたトーンの挿し絵を見たら、頭の中で瞬時に、山とデザインが結びつきました。「あ、山にもデザインってあるんだ」という驚きと発見の瞬間でした。

それからは串田さんにますます興味が湧いて、古本屋などをまわり、著書を買い集めました。それらを読んで気がついたのは「串田さんはデザイン的な目と感性で山を見ていた」ということ。たとえば、山に残る雪が溶けて模様になったところを面白がってスケッチしている話や、雲の形や色の違いを楽しんでいる話などがたくさん出てくるんですね。その感性に気がつくと、串田さんの絵がまた良いものに見えてきました。

この本で得たもう1つの大きな気づきは、串田さんのモノを見る目線です。例えば、最近増えている窓の開かないビルやホテル。串田さんは本の中で「窓を開けると家は深呼吸をはじめる。つまり、それは家にとっての本能である」と書いています。これは一例ですが …

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