今年「クリエイティブデータ部門」が新設され、イノベーション部門と共に独立して新たなアワード「ライオンズイノベーション」となった。この新たなアワードでは何が議論され、どんな受賞作が選ばれたのか。審査員のなかのかなさんと皆川治子さんに聞いた。
「投資に値するか」と「ユニークネス」を同時に見る
――イノベーション部門とクリエイティブデータ部門、それぞれの審査基準を教えてください。
なかの▶ イノベーション部門の審査基準は「投資に値するか」。つまり「ゲームチェンジャーになりえるか」「社会をよりよい方向に変えるか」。そして「ユニークなアイデアか」です。今年も投資会社の方が審査員に入っていて、「投資に値するか」は重要な基準となっていました。最後の1つはカンヌらしいところで、スタートアップ系のピッチコンテストなどとの違いを挙げるなら、カンヌは「ユニークネス」を非常に大切にしています。
皆川▶ クリエイティブデータ部門は「継続性があるか」「スケーラブルか」、そして「そのアイデアは自分がやりたかった!という驚きがあるか」「データが誰の目にも生きて見えるか」。こう見ると、同じライオンズイノベーションの部門でもだいぶ様相が違いますね。クリエイティブとデータ、それぞれの専門家が審査員をしているので、両方の視点を満たさないと入賞できません。審査員は皆オープンで好奇心旺盛な人ばかりで、クリエイターがコードをその場で教わってみたり、クリエイティビティって何なの?とデータ側の審査員がクリエイターに質問したり。「審査員で1つのチームをつくれば、ドリームチームがつくれるかもね(笑)」なんて話していました。
満場一致で「グランプリなし」その理由は?
皆川▶ クリエイティブデータ部門は早々に全員が「今年はグランプリなし」という意見で一致していました。各サブカテゴリで条件を満たすものはあっても、サブカテゴリを超えてはみ出していくパワーを持ったものはなかった印象です。ただ、審査員は …