アートを取りまく複雑な三角関係
ある日どうやってもうまくいかないデザインに頭を抱えていると、同僚が私の肩をポンと叩いてこう言った。「Kill your darlings!(あなたの愛しい人を殺せ)」。これは、制作過程で自分が気に入ってる要素にこだわるがあまり全体がダメになってしまっているとき、あえてその要素を捨てなければならない行為を指している。
創作に関わる人なら誰しも一度はその痛みを経験したことがあるだろう。そんな愛ゆえに殺された日の目を見ない制作物を、アートオークション形式で売りさばいてしまおうというのが"Dead Darlings"というイベントだ。2005年にアーティストのターニャ・テオドローと、グラフィックデザイナーのリナ・オゼルキナの発案で始まり、これまでアムステルダムを中心にヨーロッパ各地で全8回開催されてきた。
Dead Darlingsの最大の特徴は、作家名をふせてオークションを行うことだ。参加アーティストのリストはポスターやカタログで確認できるものの、誰がどれをつくったのかは落札後まで明かされない。「Dead Darlingsに集まってくるのは、アーティスト自身が最終的に価値を見いだせなかった作品。だから作者の名前から離れたところで第三者に純粋な評価をゆだねて、作品にとって幸せな第二の人生を歩んでもらおうというわけ」と主催者のターニャは語る。
出品されるのは、展示の際泣く泣くシリーズから外した一枚の写真や …