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デザインプロジェクトの現在

ミラノサローネで見えた 日本デザインの独自性

川島蓉子

今年のミラノサローネは、例年に比べると、日本勢の出展も取材陣も少ない気がしたが、以下の事例は、出展によってブランドイメージを上げた日本企業やブランド。世界に向けて発信するにあたり、サローネの意味は大きいと思う。

01 「LEXUS - A JOURNEY OF THE SENSES」ZONE 3では、フィリップ・ニグロ氏と米田肇氏のコラボレーションにより、視覚、聴覚、触覚、嗅覚に加え、味覚の刺激から生まれる新たな五感体験を三つのシーンで表現。

02 同シーン1

03 「2016/ project」の展示の様子。古い有田焼や器の欠片、1616/ arita japan、そして16名の2016/ 参加デザイナーがそれぞれデザインしているプロダクトを展示した。

食を入り口として、
五感を体験させた「レクサス」

レクサスは、トルトーナ地区の「スパツィオ・レクサス-トルネリア」にて、「LEXUS - A JOURNEY OF THE SENSES」と題した展示を行った。連日、大行列ができる人気ぶりで、「ミラノ デザインアワード コンペティション」で自動車メーカーとして初の「ベストエンタテイニング賞」を受賞した。

テーマとして掲げたのは「Senses=五感」。テーマの文言自体は、とりたてて新しくないのだが、訪れて体験し、ちょっと驚いた。空間デザイナーのフィリップ・ニグロ氏と、大阪を拠点に活躍するシェフ、米田肇氏が創り上げた企画展は圧巻だった。

素朴な自然木をびっしり連ねた空間は、モダンな手仕事の温かみとともに、そこはかとない日本らしさを漂わせている。従来の「レクサス」が展開していた、「“硬質でちょっと敷居が高いゴージャスなイメージ”と今年は違う」と期待いっぱいで展示室に入った。特筆したいのは、“五感体験の集大成”と位置づけられた「ゾーン3」だ。米田氏は「『レクサス』のものづくりに対する姿勢への敬意と、ラグジュアリーブランドとしてのおもてなしの精神への共感を表現した」という。斬新だが、心身が持っていた根源的な何かを呼び覚ましてくれる、記憶の奥に隠れていた思い出を引き出してくれる。心身の外部と内部を結んでくれる、そして記憶の過去と今、未来を結んでくれる体験だった。

「ゾーン3」を構成しているのは3つのスペース。ひとつめの部屋では、「雨の雫」と名づけられたスパークリングキャンディを渡される。空間には、暗闇の中、光の粒子が上から下へと走っている。スパークリングキャンディを口に含んで、光が走る壁面に顔を接近させていくと、口中ではじけるプチプチという触感が聴覚を刺激し、降る雨のただ中にいるような錯覚に陥る。雨降りの情感が身体の中に入ってくる。2つめの部屋は、床に木の年輪のような紋様が記された円形のスペースで、チョコレートトリュフのようなものを供される。中央に立って口に含むと、カカオバターの中から新緑のかぐわしい香りがする液体があふれてくる。一方、足元からは、押し上げるような微かな振動が伝わってくる。大木の幹が地球から水を吸い上げていくさまを、口中と足裏から体感してもらうことを意図したという。そして3つめの部屋は、暗闇に星がまたたくドーム状の空間に、地球の映像が浮かび上がるテーブルが配され、カップに入ったスープが供される。その名も「地球のスープ」。滋味深い風味が地球のイメージと重なり、心身に豊かな気分が広がってくる。

米田氏は、工学系の仕事を経て …

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